売上・仕入などの計上基準って?「発生主義の原則」とは
通帳

商品を注文したとき? 商品が到着したとき? それとも、お金を払ったとき? 記帳をしようとして、そのタイミングに迷ったことはありませんか? 会計の世界には、記帳をするタイミングを定めた「発生主義」という原則的な考え方があります。

記帳するタイミングについてルールが必要な理由

確定申告には、日々の売り上げや費用を記帳した帳簿が必要です。記帳の際は各取引の日付を記載しますが、それをいつにするによって年の所得が変わることもあります。

 

たとえば、商品の仕入れについて、注文をして1カ月後に支払いをしたとします。このとき、注文のタイミングで費用を計上するのか、支払いのタイミングで費用を計上するのかでは、1カ月の時間差が生じます。さらに、注文から支払いまで年をまたぐ場合は、費用の計上が年をまたぐことになり、1年間の所得にまで影響が及ぶのです。すると、税金の額も変わってしまいます。

 

こうしたトラブルを回避するため、どのようなタイミングで記帳をするかのルールが必要なのです。このルールを「発生主義」の原則といいます。

「発生主義」の原則とは?

発生主義の原則とは、取引が「発生」したタイミングで記帳するという決まりのことです。商品を仕入れたときは、注文をした(注文が「発生」した)タイミングで費用を計上します。一方、商品が売れたときは、お金の入金がまだだったとしても、請求をした(請求が「発生」した)タイミングで収益を計上します。

 

たとえば、12月25日に商品10万円分をクレジットカード決済で仕入れ、翌年1月15日に通帳からお金が引き落とされるとします。この場合は、12月25日の時点で、仕入10万円と記帳します。

なぜ発生したタイミングで記帳するのか

では、なぜ取引が発生したタイミングで記帳を行わなければいけないのでしょうか。会計は、お金の流れよりも、事業活動の実態を重視しています。確定申告書を見る人は、事業が今後どうなっていくかに興味があるからです。

 

銀行の融資担当は、事業主の確定申告書を見て、融資をするかしないか、あるいはいくらまでなら融資できるかを判断します。仮に取引が発生したタイミングではなく、お金が入金されたタイミングで記帳を行っていたとしましょう。入金金額がいくら多かったとしても、それは5年前に発生した売り上げによるものかもしれません。つまり、その年の売り上げ自体は大きくても、今後、事業が拡大する可能性があるかどうかの判断材料にはしにくいのです。

 

こうした理由から、記帳は発生主義が原則とされています。

「現金主義」による特例とは?

「現金主義」とは、お金の流れをそのまま記帳する方法です。取引が発生していたとしても、お金が動かなければ記帳をしません。売り上げは入金されたとき、費用は支払いをしたときに記帳します。

 

現金主義で記帳をするには、前々年分の事業所得の金額の合計額が300万円以下であることが条件です。「現金主義による所得計算の特例を受けるための手続」を税務署に持参、あるいは送付して、審査が通れば、この方式を採用できます。

 

ただし、青色申告の65万円控除を受けるためには、前々年分の事業所得の金額の合計額が300万円を超えるか否かにかかわらず、発生主義による記帳をしなければなりません。

帳簿は自らの事業の現状を把握するために役立ちます。正しい帳簿付けは、事業を長く続けていく一助になるのかもしれません。

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