仕事用の車やバイク、自転車などを買う際は、新品と中古のどちらがいいのでしょうか。同じ自動車を「新車」「耐用年数の経過した中古車」「2年落ちの中古車」でそれぞれ購入した場合、減価償却費がいくらになるかを試算しました。
そもそも減価償却とは?
減価償却とは、ある資産の購入金額を、その「耐用年数」によって、数年に分割して計上していくことです。同じ値段で購入したとしても、1年間で経費に計上できる減価償却費は、その資産の耐用年数によって異なります。
たとえば、同じ自動車を新品と中古で購入した場合、中古車は耐用年数が短いため、1年に計上できる経費の額は大きくなります。しかし、償却期間を終えて買い替えをすると仮定すると、購入のスパンは中古車の方が短くなります。つまり、どちらが得かは簡単に判断できないのです。ここでは、減価償却費に注目して、新車と中古車の比較を行います。
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車両の耐用年数
車やバイク、自転車などいわゆる「車両」だけでなく、資産の耐用年数は財務省例で定められています。
新しく車両を購入した場合の耐用年数
- 普通自動車……6年
- 軽自動車……4年
- バイク……3年
- 自転車……2年
※10万円以下であれば購入した年に全額を消耗品費として計上することも可能
中古の車両を購入した場合の耐用年数
- 耐用年数がすでに経過している車両……2年
- 耐用年数の一部が経過した普通自動車及び軽自動車……下記の式で計算
(新車購入時の耐用年数-経過年数)+経過年数×20%(1年未満切り捨て)
(例)2年落ちの普通自動車を購入した場合の耐用年数
{72カ月(6年)-24カ月(2年)}+24カ月×20%=52.8カ月(4.4年)
1年未満は切り捨てのため、耐用年数は4年となる。
新車、耐用年数の経過した中古車、2年落ちの中古車、それぞれの減価償却費は?
では、価格が200万円の普通自動車を新車で購入した場合、耐用年数の経過した中古車として購入した場合、2年落ちで購入した場合で、耐用年数と1年間に計上できる減価償却費の額を比較してみましょう。なお、事業割合は90%とします。
計算方法は「定額法」と「定率法」がありますが、個人事業主の大半が選択される定額法を採用します。 その計算式は、下記のとおりです。
取得価格×償却率×償却期間×事業割合=減価償却費
※償却率は、耐用年数に対してあらかじめ定められた率のこと
※償却期間とは、その年に事業で使用した期間のこと
(例1) 新車で購入した場合の減価償却費(耐用年数6年)
200万円×0.167×12カ月/12カ月×90%=30万600円
(例2)耐用年数の経過した中古車を購入した場合の減価償却費(耐用年数2年)
200万円×0.5×12カ月/12カ月×90%=90万円
(例3)2年落ちで中古車を購入した場合の減価償却費(耐用年数3年)
200万円×0.334×12カ月/12カ月×90%=60万1,200円
減価償却費の金額が一番大きいのは耐用年数が経過した中古車として購入した場合ですが、経費計上できる期間が一番長いのは新車で買った場合となります。冒頭でも触れたとおり、比較検討する場合は、さらに買い替えのタイミングも念頭に置いた方が良さそうです。
取得価格の考え方
資産を購入などしたときにかかる「取得価格」には、車両本体の価格だけでなく、購入時の付随費用も含まれます。たとえば、自動車税、自動車取得税、自動車重量税、自動車保険料、各種登録費用、車庫証明費用などが挙げられます。
車両取得時の注意事項
なお、新しく車を購入する際に前に使っていた車両を売却したり、下取りに出す場合は、金額により所得に影響をおよぼすこともあるのでご注意ください。 売却や下取りに出した場合、残存価格を売却額が上回った場合は譲渡所得として申告を行う必要があります。
取得価額-減価償却累計額=残存価額
この場合50万円までは非課税枠が設けられていますので、譲渡益の50万円を超える金額に課税されます。
逆に残存価格を売却益が下回った場合は譲渡所得をマイナスとして計上できます。ほとんどがこのケースに該当するため購入と同時に売却を行った場合は特に注意が必要となります。
ここでは定額法で比較をしましたが、ほかにも定率法で計算する方法、条件付きで金額を一年で計上する方法もあります。自動車など資産を購入する際には、経費計上を踏まえて購入することが資金繰りにおいても非常に大切になります。