個人年金の受取金は収入とみなされ、課税の対象です。ただし、所得税、住民税だけでなく、贈与税まで払わなくてはならないことも。個人年金の受取人が保険料負担者(契約者)本人か否かが、税金面にどう影響するのかを解説します。
そもそも個人年金(生命保険)の契約形態とは
個人年金を含め、生命保険の契約には、下記の三者が関わっています。
- 契約者:保険の契約者、保険料の支払いをする人
- 被保険者:保険の対象となる人
- 受取人:年金を受け取る人
個人年金の受取金にどんな税金がかかるかは、契約者と受取人の関係で変わります。
契約者と受取人が同じ場合
契約者と受取人が同じ場合、つまり保険料の支払いをしている契約者本人が年金を受け取る場合について説明します。
契約者と受取人が同じとき、受取金は「雑所得」とみなされます。つまり、所得税、住民税がかかるのです。
雑所得は、下記の式で計算します。
雑所得=受け取った年金額-必要経費(すでに支払った保険料)
各項目の金額は、受け取った年の末頃に届く「支払明細書」で確認できます。個人事業主の場合、雑所得が1円でも発生する場合は事業の収入に付け加えて確定申告をすることが必要です。
なお、年金が支払われる際には、(受け取った年金額-必要経費)×10.21%の所得税および復興特別所得税が源泉徴収されます。ただし、受け取った年金額から必要経費を引いた金額が25万円以下の場合は、源泉徴収されません。
契約者と受取人が異なる場合
では、契約者と受取人が異なる場合、つまり保険料の支払いをしている契約者と別の人が年金を受け取る場合はどうでしょうか。
契約者と受取人が異なるとき、受取金は1年目は贈与税の、2年目以降は所得税と住民税の課税対象です。2年目以降の所得税の計算は、課税部分が階段状に増加していく方法により計算します。
1年目と2年目以降で課税される税金が異なるのは、1年目に「年金受給権(年金を受け取る権利)」が贈与されたものとみなされるためです。たとえば、契約者が夫、受取人が妻だったとすると、1年目は夫から妻へ年金受給権が贈与されたものとして、妻は受取金の全額に応じた贈与税を支払わねばなりません。
1年目の贈与税の額は、年金受給権の「権利評価額」をもとに計算します。権利評価額とは、その個人年金保険はどのくらい価値がある保険なのかを示した額で、保険会社に問い合わせれば確認できます。
この場合の贈与税額は、下記の式で計算します。税率と控除額は、権利評価額によって変動します。
贈与税額=(権利評価額-基礎控除110万円)×税率-控除額
たとえば、権利評価額が500万円だとすると、税率は15%、控除額は10万円。よって贈与税額は下記のとおりです。
(500万円-110万円)×15%-10万円=48万5,000円
契約者と受取人が違うだけで、夫婦間でもこれだけの贈与税が発生します。仮にこれが契約者=受取人の個人年金保険で、むこう10年間、毎年50万円受け取ることができるとします。毎年の必要経費が30万円だった場合、雑所得は50万円-30万円で20万円、所得税の最低税率が5%、住民税は10%ですので、20万円×15%で1年間の所得税・住民税は3万円になります。毎年受け取る金額は変わらないので、3万円×10年で30万円。この時点で贈与税がかかる上記の内容は税金が高いことがわかります。さらに2年目以降は所得税がかかってくるので差は歴然です。
なお、贈与税は原則、贈与された財産の金額が年間110万円の基礎控除額を超えない限りは、確定申告不要とされています。したがって、権利評価額が110万円を越えたときのみ確定申告が必要です。
契約者と受取人は途中で変更が可能
将来困らないようにと思って契約したのに、契約者と受取人を変えただけでこんなに贈与税を払わなければならないなんてと思う人もいるでしょう。
契約者と受取人は、途中で変更が可能です。加入している保険会社に問い合わせましょう。ただし、変更された時点で、年金をもらえる権利が贈与されたとみなされるため、変更時までに支払った保険料の権利評価額に対しては贈与税がかかります。したがって、たとえば払込期間が30年の個人年金保険があり、25年分支払ってから契約者の変更をした場合、25年分の権利評価額、つまり25年分支払った個人年金保険はどのくらいの価値があるのかということが計算され、その金額に対して贈与税がかかるということになります。贈与税の支払いを少なくしたいと考えている方は、お早めに変更の手続きを取ることをおすすめします。
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個人年金を受け取った際にかかる税金は何?
個人年金の受け取りがあった際の課税関係を把握していないと、税金に対する思わぬ出費で家計を圧迫しかねません。必要に応じて、契約者と受取人を変更しておきましょう。