
皆さん、「ホスト」にどんなイメージをお持ちですか? アゲアゲな遊び人系? 誠実さの足りないお調子者系? それ、偏見です。歌舞伎町のホストクラブ「TOPDANDY」に勤務する京志郎さんは、どちらかというと”誠実さを売りにしてる系”だから。
実は、個人事業主に分類されるホスト。売れっ子となるには、個人の努力と成長が不可欠です。売れなきゃ、収入だって寂しい……。京志郎さんは、何を隠そう“1200万円プレイヤー”なんです!
サラリーマン生活に絶望して「ホスト日本一」をググった
――京志郎さんは、どういう経緯でホストになったのでしょうか?
高校卒業後、1年間はサラリーマンとして会社に勤めていたのですが、その頃にはもう先輩の給料事情がなんとなくわかってしまったんです。「このままサラリーマンやっててもつまらないなあ」と思い始め、「お金を貯めよう!」「ホストになろう!」って。そして「ホスト日本一」とググりました(笑)。
――そこで「ホスト」という職業を選んだのは、ご自身の中で素養みたいなものを感じていたのでしょうか?
いえ。学歴もない人間が一気に稼げる仕事をほかに思い付かなかったんです。僕は地元が愛媛で、「まず、東京に出よう!」と、東京の友だちの家に一週間くらい居候しました。その間にいろんなところへ面接を受けに行ったり、怪しいモデル事務所のスカウトに付いていったり、たくさんの話を聞いて回りました。でも結局「これをやってもサラリーマンのときと変わらないんじゃないか?」と、すべてがしっくりこなくて。一番自分の人生を変えられそうなのがホストだったんです。
――京志郎さんって、すごくイケメンじゃないですか。やっぱり、子どもの頃からモテたんでしょう?
僕は男子校だったんで、女の子と関わるのは得意じゃなかったんです。だけど、若さ特有の根拠のない自信で「がんばれば、ホストで稼げるだろう!」と思ってて。「この容姿ならいけるだろう!」とか、そういうのはあまりなかったです。
生活や仕事への姿勢がちゃんとしてないやつは売れない
――新人を見ていて、どういうタイプの子に「こいつはホストに向いているな」と思いますか?
野心がある子ですね。「お金を稼いでやる!」と思っていたら、女の子への対応も違ってきます。普通の男子って、恥ずかしがって初対面の女の子にガッといけないじゃないですか? そこで、周りの目を気にせずガッといけるタイプには「売れるな」と思います。
――京志郎さんは、普段からガッといけるタイプですか?
全然いけなかったです。いけるようになったのは、ここ2年くらいじゃないですかね。僕、はじめは売れてなかったんです。当時はサラリーマンに毛が生えたくらいの収入しかなくて。ある程度の収入を手にするようになれたのは、ちょうど一年経ったあたりからでした。
――それは、ご自身の中で何かコツをつかんだのか、売れるために何かをやり始めたのか?
一人のお客さんが僕を気に入ってくれたことで自信がついたからです。自信がついたことで売り上げが上がり、ランキングに入って……と、そこから変わりました。
――京志郎さんがホストとしてお手本にしている先輩はいますか?
やっぱり、売れている人って堂々としているんです。どれだけ会話が盛り上がってなくても、焦らない先輩が実際にいて。すごいしゃべるんだけど、聞いていると全然中身がない(笑)。でも楽しげに堂々と話しているから、盛り上がっちゃう。「この人の真似をしよう!」と思いましたね。自信を持たなきゃダメなんだなって。
僕、最初の一年は、女の子に付いて3分くらい話が盛り上がらなかったら汗だくになってたんです。「こんなに汗かく!?」みたいな(苦笑)。そういう状態から少しずつ克服していきました。
――反対に、“売れないホスト”の悪いところって何だと思いますか?
単純に、がんばってないですね。自分にすごく甘いです。たとえば、体形維持もそうですし、お客さんへの連絡がマメじゃない。あと、朝起きるのが遅い人もあんまり売れないですね。売れているホストほど、朝は早いですよ。うちの店は18時半から営業開始なんですけど、中には17時半に起きる人もいるんですよ。もう、お客さんに連絡する時間がないですよね。そういう、自分に甘いホストは売れないです。
1日に700万円、1カ月で1200万円を売り上げた
――ホストの報酬は、どのように決められるのでしょうか?
まず、この店では日給の最低保証があります。ある程度の売り上げに達すると完全歩合になるシステムで、うちの場合だとだいたい売り上げ(小計)の50%。それに「指名賞」やランキングの「ナンバー賞」といった賞金が上乗せされます。あとは、入れたお酒のボトルバック。ボトルに賞金が付いているみたいなイメージです。
――売れっ子のホストは、月にどのくらい稼ぐのでしょうか?
ホストは基本的に個人事業主なので、店舗と業務委託契約を結ぶ形で仕事をしています。売上高の中でどれだけの割合が報酬に反映されるかは、全員一律ではなく個別契約。売上高に関していえば、うちのグループでは月5500万円というのが記録として残っていて。一番稼いだホストは、年間で億を超えています。
――1カ月で5500万円!? 京志郎さんも“1200万円プレイヤー”(月の売り上げの最高額が1200万円)と呼ばれていますが、1日で売り上げた最高額はいくらでしょうか?
最高記録は700万円で、僕の誕生日イベントでした。シャンパンタワーが出たんです。うちの店だとシャンパンタワーは最低で150万円。そのときは普通のシャンパンタワーではなく、台形の500万円するタイプが出ました。
――すごい……! お店に所属されているホストの収入の平均額はありますか?
そういうデータは出してないのですが、イメージとしてはピラミッド型です。頂点の人は一握りで、会社員に毛が生えた給与のホストがズラーッといる。そこから一歩抜け出せる者が何人いるかが、店として有名店になるかどうかが決まります。トップが毎月のように何千万円も売り上げるとは限らないので。そう考えると、下のホストもそれなりに稼ぐお店が、やっぱり“栄えているお店”になるんでしょうね。
ホストが「それなりにお金を稼げた」と判断できるボーダーラインは、月に100万円売れるかどうかじゃないでしょうか。逆にいうと100万円売れるくらいじゃないと、ホストになった意味がないのかもしれません。
――ホストは必要経費としてどんなものが発生しますか?
自己投資ですね。ジム、エステ、サプリ。あと2週間に1回のペースで髪を切るので、ヘアメイク代も含まれます。もちろん、服やアクセサリーも経費に入ります。税務上の観点で落としてもらえないこともありますが、ホストという職業は体すべてが商品です。生活すべてが仕事につながっています。もし、税務署に「これはプライベートでしょ?」と言われても「そんなことはないです。生活を見てもらえればわかります」と断言できます。
――ちなみにホストってお店での接客はもちろん、ほかにも仕事があると思います。具体的に、一日にどういうお仕事をしているのか教えてください。
僕はだいたい午前中に起き、まず携帯電話を見ます。そして1時間くらい、LINEや電話で営業をかけます。「おはよう」「今、起きたよ」「今日は○○するよ」と、他愛もないLINEを送って。そして昼間はジムに行ったり読書したり、自分の時間をゆっくり過ごします。同伴がある日は夕方くらいにお客さんとご飯に行き、そのまま出勤。同伴がない日は、19~20時くらいに出勤して仕事して。お店は25時に終わるんですけど、それからアフターへ行く日もあります。
――ホストの仕事で特にキツく感じることは何ですか?
モチベーションの維持ですね。良くも悪くも、自分のやり方次第で収入が決まっちゃうので。正直、ラクしようと思ったらラクできる職業です。特にうちのお店は最低保証の日給があるので、売り上げがゼロだったとしても生活できなくはないんですね。でも、そういうホストは稼げない。
ホストになっていなかったら、今みたいに成長できていない
――将来、京志郎さんは独立を考えていらっしゃいますか?
僕はホストとしての独立は考えてないです。たしかに、大多数のホストは自分で何かをやりたいと考えています。そのままホスト業界にいるのか、他業種なのか、それは人それぞれ。僕はまだ具体的には決めていないのですが、他業種のビジネスをやりたいと考えています。当面は、ホストで売れてビジネスのための資金を貯めることが目標です。
――ホストという職業に就いて学んだことは何でしょうか?
う~ん……(熟考)。メチャクチャいっぱいあり過ぎてまとまらないんですけど、一つ言えるとしたら「常に自分を磨き続けること」ですね。最初は見た目をあまり気にしていなくて、素で勝負できると考えてたんです。でも職業柄、お酒をたくさん飲んで太っていくんですね。僕も最初、入店した頃と比較して8kgくらい太りました。自分で見た目に納得がいかないと自信がなくなっていき、それは接客面にもつながります。ちょっとニキビができてたら、やっぱり初回は付きたくないですから(笑)。
――「コンディションが悪いときに指名しないでくれよ!」みたいな(笑)。
はい(笑)。太ってきたら体を鍛えなきゃいけないし、むくんできたと思ったら半身浴やエステを考えます。
――最後に、ホストになって良かったと断言できますか?
断言できます。ホストになっていなかったら、性格も今みたいになっていないと思います。昔は「内向的」「人見知り」と言われてて。向上心も今ほどありませんでした。今は、自分ががんばらないとちゃんとしたお給料をもらえないので。“考える力”が身についたと思います。
――それは、ホストが個人事業主だというところが大きいですね。
そうですね。普通のサラリーマンとして働いていたときよりも、はるかにいろんな経験ができています。世間的にホストはあまり良いイメージではないですが、僕は人間的にすごく成長できたと思っています。