元税務調査官に聞いた、知られざる税務調査の裏側

会社経営者も個人事業主も、税金は少しでも低く抑えたいのが本音。しかし、決して意図的に税金をごまかしているわけではなくても、いつ税務署のチェックが入るかと、戦々恐々としている人も多いでしょう。

 

かくいう筆者も、フリーランス17年目にして初の税務調査を受けたばかりの身。なぜ自分が目をつけられたのか、回避する術はあったのかと、今なおさまざまな疑問を感じています。そこで、かつて税務署の調査官を務めたキャリアを持つ税理士のI先生に、税務調査の裏側を聞いてみました。

調査は“税金を取れそうなところ”に入るもの

――そもそも税務署は、税務調査の対象をどのようにセレクトしているのでしょうか?

税務署は納税者のデータを数字で持っています。そこで入出金の状態に異常が感じられたら、やはり目を留めますよね。彼らは業種ごとの利益や売上げの相場を、おおよそ把握しています。急に売上げが跳ね上がったりした事業者を察知して、リストアップ。これが第一段階です。

――つまり税務署側は、こちらの職種や業種まで踏まえて目を光らせている、と。

その通りです。また、過去数年と比較して、利益率や売上げが突然大きく変動するようなことがあると、税務署としては気にしないわけにはいきません。

――ちなみに私の場合、「なぜ自分が調査対象に?」と尋ねたら、「誰でも定期的にまわってくるものなんです」と説明されたのですが……。

その言葉を鵜呑みにしてはいけません(笑)。ある程度は定期的に巡回しているのも事実ですが、彼らはちゃんと狙いを定めて調査を行なっています。一例を挙げれば、売上げが1,000万円を超えると、消費税の課税対象になるのは皆さんもご存知ですよね。だから、売上げの申告が毎年、800~900万円あたりに留まっていると、“消費税納税を避けるためにわざと操作しているのでは?”と疑われ、調査対象になることもあります。

――売上げの大きさは、調査頻度に影響しますか?

それはやはり、(売上げが)少ないところより多いところを優先的に狙うことになるでしょう。年商300万円の個人事業主より、年商2,000万円の企業をチェックした方が、税務署としても効率がいいわけですから。できるだけ取れそうなところから当たるのは間違いありません。

追徴課税を抑える方法は、○○すること!?

――では、そういった自社の財務データのほかに、税務調査を呼び込む要素があるとすれば、どのようなことが考えられますか?

たとえば、ある企業に調査が入り、“A社にいくら払った”というデータが得られれば、状況によっては念のため、そのA社を調べることがあります。そこで入出金のデータに齟齬があると、本格的に調査対象となるでしょう。ライター業でいえば、取り引きのある出版社に調査が入れば、その影響でついでに調べられることはあり得るわけです。

――税務署は我々の銀行口座の入出金状況を、チェックできるのでしょうか?

できます。税務署は、調査に該当する金融機関から、データを照会する権限を持っています。

――私の場合、ある日突然税務署から「税務調査に伺いたいのですが」と電話が入りました。この時点で採るべきベストな対応は?

まずはその電話口で、相手の名前と所属、肩書をちゃんと確認すること。間違いなく税務署の調査官であることを確認しましょう。その上で調査日の設定をすることになりますが、日時についてはわりと融通が利くもの。仕事状況など各自の事情に合わせて、忌憚なき希望を伝えてください。その時点で契約している税理士がいれば、その後はそちらに対応をお任せすればいいでしょう。

――実際に税務調査を受ける際、少しでも追徴課税を安くあげるコツなどはありますか?

下手に反発しないこと。とにかく従順に、低姿勢に調査官の言うことを聞くのが大切です。彼らも人間ですから、反抗的な人には調査の手を強めたくなるでしょうし、素直な人で反省の色が見えるなら、追徴ではなく指導に留めてくれる可能性もゼロではありません。もし、これまでの納税状況に不備があったのであれば、それが決して故意ではなく、理解不足であったと訴えましょう。その上で、本当に発生している経費などは、はっきりと主張すべきです。

Writer Profile
友清哲
友清哲

1974年、神奈川県出身。フリーライター&編集者。1999年よりフリーランスで活動。雑誌、Webで精力的にインタビュー、執筆を行う。『日本クラフトビール紀行』(イースト新書Q)『一度は行きたい「戦争遺跡」』(PHP文庫)など著作も多数。

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