フリーランスのPR 独立前後で収入はどれくらい変わる?

商品やサービスを広く知ってもらいたい企業と、雑誌やテレビといったメディアのパイプ役を担う仕事「PR」。流行の仕掛け人として華やかな印象を持たれるPRの仕事ですが、その業務内容はメディア訪問やプレスリリースの執筆、そして効果的な訴求方法を考え戦略を立てることまで多岐にわたります。

 

PR会社に委託する企業が多いなか、フリーのPRとして独立し、着実にクライアントを増やしている人もいます。その一人が、大山夏希さん。PR会社を経て3年前に独立、現在アパレルから食品までさまざまな業種の企業をクライアントに持つ大山さんに、フリーPRの仕事についてアレコレ聞いてみました。

ファッションに特化したPRから、総合PRへ

――PRのキャリアはどのようにスタートしたのでしょうか?

ファッション関係の専門学校を卒業後、ファッションのプロモーションに特化したアタッシュ・ド・プレスの会社に入社しました。メディアへのPR活動のためファッションブランドのプレスルームに出向したのもあり、仕事内容は主に、スタイリストや編集者さんへの服の貸出業務を担当。ほか、展示会ではプレス関係者をアテンドしたり、ファッションショーをプロモーションしたり、撮影の立ち合いなどもしたりしました。でも、しばらく経って、ファッション関係の仕事から離れることにしたんです……。

――それはなぜでしょう?

ファッションも大好きだったのですが、音楽や飲食など、ほかの業界も見てみたいと思うようになりました。ちょうどそのとき、「自分の人生って何なんだろう」とモヤモヤした気持ちが広がり、これからの人生で何をやっていきたいのか、時間を掛けてじっくりと深堀りしてみたんです。そしたら、やっぱり私はPRの仕事をしたいと気づきました。ただ、これまでファッション業界のプレスしか知らなかったので、他業種の広報やプレスを経験してスキルアップしようと思い、総合PRの会社に入りました。

――総合PRの会社での仕事内容を教えてください。

腕時計や生活雑貨のブランド、商業施設、公共交通機関など、さまざまな業種のクライアントを担当しました。プレスリリースを作ったり、 PRのミーティングに参加して今後の展開を考えたり、クライアントと密に関わる仕事が多かったです。

 

トータルで7年ほど勤めて経験を積み、第二子の出産を機に2014年に独立を決意しました。

展示会や企業に飛び込み営業で自分を売り込む

――フリーになられてから、お仕事はどのように獲得されているのでしょうか?

最初は、いろいろなところに出向いて、飛び込み営業をしていました。たとえば、国際展示場の企業ブースや自分が気になったメーカーさんのマーケティング部に直接足を運ぶこともありました。

 

今までの実績をまとめた資料を用意して、売り込んでいたのですがすぐに仕事につながるケースはあまりありません。ただ、そのときに営業を掛けた企業から、しばらく経ってご連絡をいただきお仕事につながることもありました。あとは紹介していただいたり、PR会社とも業務委託をしたりしているので、そこを経由した仕事の依頼もあります。

――営業をかける企業のジャンルは決めていますか?

やはりもともとファッションが好きなのと、アパレルのPR経験があって得意な分野でもあるので、優先ジャンルにはなりますね。子どもが生まれてからは、キッズファッションの展示会にはよく足を運んでいます。個人的に、ナチュラルでオーガニックなものが好きなので、ファッションに限らず、雑貨や食品などライフスタイル全般の企業へ営業することもあります。

――PR会社とフリーランスのPRで違いはあるのでしょうか。

以前、とあるクライアントから「フリーのPR は小回りが利く」と言われたことがあります。PR会社はチームで動きますし、やはり金額が高くなる。そのため、起業して間もないベンチャーなどの場合は、身軽に動けるフリーのPRにメリットを感じられるのかもしれません。逆に予算が潤沢にある大手企業になると、プロモーションも大掛かりになりますので、チームで動くPR会社に委託することが多いですね。

クライアントの要望にあわせて契約時期や報酬を設定

――クライアントとの契約はどのタイミングで結ぶのでしょう?

基本的にはクライアントが考えるPR活動の目的やゴールを明確にして、こちらから活動内容をご提案します。

 

その目的やゴールを達成するためには「プレスリリースを配信する」「店頭イベントを開催する」「プレス向けの説明会を実施する」など、さまざまな活動が考えられるので、クライアントの予算と、できること、できないことを精査しながら、見積もりを提出して契約しています。

 

クライアントによっては、PR活動のゴールまでにあまり時間がないケースもあります。その場合は、最善の活動を提案し、臨機応変に対応しています。

――金額設定はどのように決められているのでしょうか?

1案件の報酬ですが、活動内容のボリュームによって数万円から数十万円、とさせていただいております。各案件によって内容もバラバラなので、平均値がなく、同じ活動内容によってもPRのアプローチ先の数によっても変動することがあるので、一概に決まった額を決めているわけではありません。

 

プロジェクトとして、数カ月単位で活動フィー(費用)をいただく場合や、スポットでプレスリリース作成のみ手がけ、作成費をいただく場合もあります。あとは、クライアントの予算にあわせて、活動内容を検討しています。

――企業に勤めていた頃と、独立されてからでは収入にどれくらい差がありますか?

年収で比較すると、2倍くらい増えています。ただ、その分仕事量も増えてはいますね。フリーランスという働き方もあってか、土日も関係なく仕事をしたり、早朝に仕事をしたり……公私の時間をはっきり分けることが難しいなと。時間にメリハリをつける、というのが今後の課題でもあります。

PRは常にアンテナを張ることも仕事のうち

――PRの仕事をする上で大切にしていることは何でしょう?

常にいろいろなところにアンテナを張っています。関わっている案件以外でも、今何が流行っているのかなどはこまめに調査しています。それをどうクライアントにフィードバックするか、分析する力を鍛えることも大事だと思います。

――最後に、今後どのような仕事をしていきたいか教えてください。

総合PR会社に在籍していたときに、行政の仕事で観光事業を担当したことがあります。その場所で暮らしていたら見えにくい観光資源の強みを発掘して、その土地の良さを、どうやってアピールしていくか、戦略を立てることに面白さを感じました。私自身、地方出身者でもあるため、都心にいながらも、自分の故郷をはじめとする各地方を盛り上げるためのPRの仕事はやっていきたいなと思っています。

 

いい商品やサービスを手掛けられているのに、世の中に知ってもらう方法が分からないという中小規模の企業や団体も多いと思いますので、そんな企業や団体のお役に立てるPRとして活動していきたいです。

Interview
大山夏希さん
大山夏希さん

静岡県浜松市出身。6歳と4歳の二児の母。アタッシュ・ド・プレス、総合PR会社の勤務を経て、2014年より、フリーランスのPRプランナーとして独立。独立後は、ファッション、食品、ライフスタイル雑貨などのPRに携わり、ママ、キッズ、ファミリー向けの商材を中心に、イベントとPRを両立させたプロモーション展開を得意としている。
▼公式サイト
http://www.flapping-sound-pr.com/
▼Instagram
https://www.instagram.com/natsuki_oyama/

Writer Profile
末吉陽子
末吉陽子

編集者・ライター。1985年、千葉県生まれ。日本大学芸術学部卒。コラムやインタビュー記事の執筆を中心に活動。ジャンルは、社会問題から恋愛、住宅からガイドブックまで多岐にわたる。
▼公式サイト
http://yokosueyoshi.jimdo.com/

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