こんにちは。ライターの斎藤充博です。今日は埼玉県の大宮駅東口から徒歩1分のところにあるコワーキングスペース「7F(ナナエフ)」にやってきました。
こちらは大宮という地方都市にありながらも成功しているコワーキングスペースとして有名。これまで当連載でいろんなコワーキングスペースを回ってきましたが、行った先で「コワーキングスペース巡りをしているんだ? それじゃあ7Fさんにはもう行ったの?」なんてよく聞かれるんです。一体どんな場所なんでしょう。
7Fの店長は現役女子大学生!?
コワーキングスペースを案内してくれたのは店長の船底さんです。この人若いな……と思っていたのですが、現役大学生と聞いてびっくり。
斎藤:どうしてコワーキングスペースで働こうと思ったんですか? 大学生が興味を持つような場所なのかなって思いますが。
船底さん:高校生のころから場所作りに興味があって、ずっと7Fでバイトをしたいって思っていました。ただ、高校が厳しくてバイトはできなかったんです。大学生になってからここで働き始めて、昨年店長になりました。
斎藤:大学生でコワーキングスペースの店長なんて聞いたことないですよ!
船底さん:そうですかね?でも私は今やるのがいいのかなって思っています。コワーキングスペースはいろんな人が集まりますよね。店長って肩書があれば、その中に入っていけるじゃないですか。将来はライブハウスを経営したいって夢があって、そのためにいい経験を積めたらと思っています。
斎藤:……これはもう純粋にすごい! 感心しますね。
自分に適した高さのイスとデスクで仕事ができる
7Fのコワーキングスペースの風景はざっとこんな感じ。この写真だとゴチャゴチャしているように見えますが、その理由はいろいろな種類の机とイスを用意しているから。
丸いデスクと低めのイス。おしゃれな雰囲気で、ちょっとした打ち合わせに使えそうですね。
こちらは外を向いた長いデスクと背もたれがしっかりついた高めのイス。作業だけしたい人はこっちがよさそうです。
隣の人との間仕切りがついた作業集中専用スペースもあります。ここは一番人気ですぐに埋まってしまうとか。
こんな風にいろいろな机とイスがあるのですが、人それぞれ合う高さが異なるため、「机とイスの高さを変える」ことを心がけているそうです。確かに高さが変われば作業の姿勢が変わりますからね。いい気分転換にもなりそうです。
ス奥の方には畳と座椅子のスペースまであります。僕は本業が指圧師なのですが、このくらいの場所があれば、ここで本格的な施術ができるじゃないですか……! 気持ちを抑えきれずに船底さんの肩を指圧させてもらいました。メチャクチャこってますね。このコワーキングスペース内だけでも需要ありそう!
モニターや共有PCを貸し出してもらえるので、出先の仕事に重宝
大きなモニターを使って仕事している人がたくさんいます。普通のコワーキングスペースだったらノートPCだけで作業しますよね。かなり独特な雰囲気です。
このモニターは、7Fで無料レンタルしているんです。そういえば、僕の友達のプログラマーにも「モニターが2枚ないと仕事をする気になれない」って言っている人がいるんですよ。そういう人は家で作業するしかないと思っていたけど、7Fなら存分に作業できますね。
また、PC自体を持ってきていなくても大丈夫。僕が今見ているデスクトップPCは無料で使わせてもらえます(1台限り)。ほかにもノートPCを1時間100円でレンタルできます(台数に限りあり、予約不可)。PCって持ち歩いていないときに限って、必要になりませんか……?これは助かる。
7Fで用意している販売物と貸出物はリスト化されて受付に表示されています。こういう情報がまとまっているのは便利。
6階はシェアオフィスと、52人収容可能な貸し会議室
6階に移動するとシェアオフィスの「Office6F」があります。そうそう、言い忘れましたがコワーキングスペースの7Fはもちろんビルの7階にあります!
6階にはもう一つ「貸会議室6F」もあります。収容人数は52人。大宮にはちょうどこれくらいの大きさの貸し会議室が少なくて、大人気だとか。
会員は埼玉在住がほぼ100%! 地域密着型のコワーキングスペース
7F創業者でありオーナーの星野邦敏さんにお話を聞いてみました。
斎藤:7Fの利用者はどんな人が多いんでしょうか?
星野さん:月額会員さんは120人くらいで埼玉県に在住している人がほぼ100%ですね。年齢層は幅広くて10代から70代までの人に使ってもらっています。いろいろな人が来てくれますね。起業したての方、長年フリーランスをしている方、資格取得を目指している社会人、受験勉強している高校生もいました。都心だとITなどの業種に絞るやり方もあるとは思うんですが、7Fではそうしていません。
斎藤:大宮ならではの利用のされ方というのはあるんでしょうか?
星野さん:やはり埼玉が地元の人や、埼玉に何らかの縁がある人が使ってくれています。コワーキングスペースって起業する人が使うことが多いんですが、その中でも、サラリーマンとして東京に出ていた人が地元である埼玉に戻って起業した、というパターンの人が7Fを使ってくれますね。
星野さん:学生起業する人だったら、渋谷や六本木や五反田などに集まりますよね。会社を定年退職後に起業するような人は、コワーキングスペースより行政の運営するインキュベーション施設や個室のレンタルオフィスに行く傾向があります。そういう地域の特色はあると思います。
斎藤:なるほど、地域密着のコワーキングスペースなんですね。
星野さん:ビルの前の通りを使わせてもらって2013年に「I love SAITAMAぷろでゅーす」という地域のお祭りをしたこともあります。大宮銀座の道路を使いました。
星野さん:ほかにも、氷川参道でイベントを開催したこともあります。こちらは1万7,000人くらい集まったと聞いています。
また「題名のない大宮昼食会」という会を定例的に行っています。これはあえてテーマを設けずにどんな人でも来てもらえるようにしています。
複数候補地から大宮を選んだのは、地元で仕事をするのも面白そうだから
斎藤:そもそも、どうして大宮でコワーキングスペースを始めようと思ったのでしょうか。
星野さん:当時、「ここでやれば絶対にうまくいく」と思っていた場所が3つありました。東京都の池袋駅の東口と、千葉県の柏駅と、埼玉県の大宮駅です。いずれも周辺の駅と比べて乗降者数が2倍以上の駅ですね。ここから徒歩5分圏内で100平米以上の面積でコワーキングスペースを作れば、当時は誰がやってもうまくいったと思います。
その中で大宮に作ったのは、僕の生まれが大宮に近い浦和だったから。大宮は東口と西口で雰囲気が違っていて、活気がある街です。地元で仕事をするのも面白いかもしれないなと。そんな気持ちがありました。
そんな中でこのビルのオーナーと偶然知り合うことができたんです。ちょうどそのときに空きがあったので、入りませんか? ということになりました。当時はまだコワーキングスペースに対するテナントの理解が少なかったですからね。ありがたかったですよ
増床に次ぐ増床で、今年もある計画が……?
斎藤:実際に運営としてはうまくいったのでしょうか。
星野さん:営業初月からうまくいって、月間700人くらいは来ていましたね。現在ではコワーキングスペースだけでも月間2,500人ほどの利用があります。需要にピタッとはまったという感じです。現在は6階も借りてシェアオフィスと貸会議室も運営しています。
斎藤:増床も当初からの目標にあったんですか?
星野さん:いや、当初はここまで拡大するとは思っていなかったです。もしフロア増床を始めから考えていたとしたら、名前をもうちょっと違うものにしていましたね。別の階を使うとなると「7F」という名称はややこしい(笑)。
斎藤:ちなみに星野さんのこれからの計画は?
星野さん:7Fとしては、もう少し増床はしたいというのはありますね。実際に今年の夏にもう1フロア増床して3フロアになります。ただ、それは現在入居中の既存テナントさんとの関係などもあり、まだ詳しくは話せないんです。徐々に情報は出していけると思います。
それから個人的にやりたいことはいろいろあるんです。今38歳なのですが、50歳くらいで地方の町長になりたいと思っていまして。
斎藤 :おお!この連載で立候補の話がでるとは思いませんでした。
星野さん:実際やるかどうかわかりませんけどね(笑)。今後地方の人口が減ってゆく中で、何か地域の助けになれるようなことがやりたいなって思っています。
まとめ
地方都市にもかかわらずコワーキングスペース界隈で必ず名前が出てくるのが「7F」。なんでこんなに有名なのか、行ってみたらわかりました。オーナーの星野さんの熱量がすごいんですよ。まさか町長になりたい、なんて話が飛び出してくるとは。そんな発想のスケールの大きさがコワーキングスペースにもあらわれているのだと思いました。埼玉県に在住していなくても、星野さんの熱気に当てられに行ってくるのも、いいかもしれませんよ。