【座談会】保活、病児保育はどうしてる? 自営業夫婦の「育児問題」

自営業は、会社員に比べて子どもを認可保育園に入れるのが難しいといわれます。また、自分の代わりを探すのが難しい、仕事を逃したくないといった理由で、子どもの急な病気や発熱への対応に悩む人もいるでしょう。育児によって、仕事量を減らさざるを得ないケースもあるかもしれません。

 

そこで今回は、立場の異なる3組の自営業夫婦にお集まりいただき、保活の体験談や病児保育について、子どもが産まれてからの働き方の変化など、それぞれの「育児の問題」についてお話しいただきました。

※3組のお名前はすべて仮名です。

 

  • 林田知行さん(39歳)、千紗さん(38歳)
    2009年に結婚。ともにライター・編集者を経て、2016年に制作会社を設立し、夫婦で経営している。5歳の娘と3歳の息子がいる。川崎市在住。
  • 里田誠一さん(43歳)、英子さん(39歳)
    2015年に結婚。ともにフリーランスのライター・編集者だったが、2017年に英子さんが夫の青色専従者に。2歳の娘がいる。目黒区在住。
  • 田部加奈子さん(39歳)
    夫婦ともにフリーランスのライター・編集者。2010年に結婚したあとも、それぞれ個人事業主として活動。5歳の娘と3歳の息子がいる。武蔵野市在住。

認可に入れるのは一苦労!? 自営業の産休・育休事情

――自営業の場合、決まった産休・育休の期間があるわけではありません。皆さん、産後の仕事復帰はいつごろでしたか?

林田さん:2人の子どもを保育園に預けて本格復帰したのは、上の子が2歳、下の子が0歳のときでした。

大学時代から仕事を始めてかなり忙しく働いてきたので、最初の出産後しばらくは子どもとゆっくり過ごそうかなと思っていたんです。川崎市は認可保育園の入所選考が激戦だし、フリーランスだし、どうせ入れないだろうと申し込みもしていなくて。(千紗さん)

 

里田さん:私が保育園に預け始めたのは、子どもが1歳半のときです。妊娠までハードワークを続けてきたのと、産後の体調が安定しなかったので、少しゆっくりしていたんですね。ただ、連載を持っていたので、産後2、3カ月後には仕事を始めました。(英子さん)

 

林田さん:私も連載企画を担当していて、上の子の1カ月検診が終わったころには取材に出ていました。それからも細々と仕事を続けて。(千紗さん)

 

田部さん:うちは2人の子どもをどちらも0歳から保育園に入れましたが、産後はあまり休みませんでした。入所までは、近所に予約の取りやすい無認可の一時保育に子どもを預け、夫と交代で子どもを見ながら仕事をしていました。

 

林田さん:うちの近所は一時保育の予約が取りづらくて、寝ている間か、夫に子どもを見てもらえる土日に仕事をしていたんですよ。里田さんはどうしていました?(千紗さん)

 

里田さん:うちは比較的よく眠る子だったので、5カ月ぐらいまでは寝ている時間が仕事の時間でした。6カ月ぐらいからは、認可保育園申し込みの点数稼ぎも兼ねて、シルバー人材センターのおばあちゃんに見てもらっていました。(千紗さん)

――自営業は、会社員と比べて子どもを認可保育園に入れづらいといわれています。皆さん、お子さんを認可保育園に預けていらっしゃいますが、保活はどの程度されたのですか?

田部さん:保活ですごく苦労しました。私の住む武蔵野市では、申請前の説明のときからフリーランスは会社員より点数が低いと言われていて。

両実家が遠くて頼れませんし、どうしても保育園には入れたかった。それなのに「第6希望まで書けるならなんとかなるでしょ」と高をくくっていたんです。

 

林田さん:結果は?(知行さん)

 

田部さん:全滅でした。そこで、隣の三鷹市と杉並区にある認証保育園のリストを作って、夫婦で半分ずつ電話をかけたんです。取材のアポ取りみたいですよね(苦笑)。20カ所かけて、面接まで進めたのが3、4カ所でした。

 

里田さん:聞いているだけで、ひやひやする!(英子さん)

 

田部さん:そして、忘れもしない3月の最終週の月曜の朝9時5分。武蔵野市役所から「繰り上がりで近所の園に入れることになりました。入るかどうか今すぐ決めてください」と電話がかかってきて。

その電話で、家から徒歩5分の認可の小規模保育園(2歳児クラスまでの保育園)に入園を決めました。

 

里田さん:下のお子さんは?(誠一さん)

 

田部さん:2歳差で生まれた下の子も、生後3カ月から同じ園に入れました。でも、2人一緒の保育園に通えたのは結局1年間だけ。上の子が3歳になって別の園に転園した翌年、下の子の通う園が移転・増員して5歳児クラスまでになったんです。自宅からも遠くなってしまって。

 

林田さん:2カ所の送迎は大変そう。うちは、市役所の窓口に居座って根掘り葉掘り、話を聞いたことぐらいですね。担当者から聞き出した情報をもとに園の希望を考え、さらに2人同時入園だったことで優先順位が上がり、運良く入れたんだと思います。(千紗さん)

 

里田さん:担当者によって、知識量が違ったりしますもんね。私も2、3回は窓口に行きました。ほかのフリーランスの人の状況も知りたかったし、提出書類などで不備があって落ちるのは嫌だったので。

ただ、目黒区は主に家の外で仕事をしているフリーランスに関しては、会社員と点数が変わることはないらしく、その点は助かりました。(英子さん)

 

田部さん:でも目黒区って激戦というイメージが……。

 

里田さん:激戦でした(苦笑)。一次選考では申し込んだ10園をすべて落選。二次選考で、どうにかバスで10分の小規模保育にすべりこみました。

あとで選考の際の順位を聞きに行ったら、入れない順位ではないが、うちは駅から近いので、近隣の園に応募が殺到したせいで落選したのでは、と。(誠一さん)

 

里田さん:実は、この4月から徒歩10分の認可保育園に転園が決まって、ほっとしたところです。しばらくは安心して仕事ができるな、って。(英子さん)

どう対応する?急な病気と病後の保育

――保育園には入れても、特に小さなお子さんは体調を崩しやすいものですよね。急な病気にはどう対応していますか?

林田さん:基本は私か夫かが対応しますが、どうしてものときのために、病児保育、病後児保育のシッターを派遣する認定NPO法人 フローレンスの会員になりました。上の子はもう年に一度ぐらいしかお世話にならないのですが、保険として入り続けています。(知行さん)

 

田部さん:いいな~。うちはフローレンスに入れなかったんです。だから、病気のときは夫婦のどちらかが仕事を休んで、その後は登録している2カ所の病後児保育のどちらかに預けます。キッズラインも登録はしていますが、まだ使う機会がないですね。

 

里田さん:うちは子どもがまだ2歳なので、私が仕事をセーブして病気に対応できるようにしています。あと、急なお迎えに備えて、2人が同時に取材に出ることはないようにもしていて。

病後は、以前見てもらっていたシルバー人材センターのおばあちゃんにお願いすることもあります。(誠一さん)

 

林田さん:川崎市は、あまりファミリーサポートみたいなものが充実していないんですよ。病後児保育も数がなく、登録していても全然予約が取れないらしくて……。だから余計にフローレンスが頼りです。(千紗さん)

――保育園のお迎え後や休日の仕事、飲み会はどうしていらっしゃいますか?

林田さん:僕も妻も、基本的には9時半~17時半勤務で、お迎えから寝かしつけまでは2人で家事育児を分担しています。ただ僕は、週に一度は必ず遅い日があり、イレギュラーな動きをすることもあります。(知行さん)

 

林田さん:私は、2人目を産んでから夜や土日はほぼ外出しなくなりました。2人育児だと大変なときはすごく疲労することがわかっていますし、出ていく側としても気持ち良く仕事ができないので。(千紗さん)

 

里田さん:うちも、夫婦ともにほとんど夜や休日には予定を入れないですね。予定を入れたい場合は、共有しているGoogleカレンダーで相手の予定を確認し、そのうえで相談することにしています。平日は、朝も夜も家事育児は2人でシェアが基本です。(誠一さん)

 

田部さん:うちも、基本的には保育園に預けている時間帯が仕事の時間です。でも、夜や土日のみならず、出張や時には旅行でも、「これはやりたいな」と思えば、それぞれ入れていいことにしています。里田さんと同様、Googleカレンダーで相手の予定がなければ、直接相談してから自分の予定を入れます。

 

里田さん:田部さんご夫婦は、すべてがイーブンなんですね。(英子さん)

 

田部さん:そうですね。仕事も家事も育児もイーブンで、お互いに一人で数日間の家事、育児を回せます。上の子が4歳になって、一山越えた感があったのが大きいです。上が2歳、下が0歳のときは地獄で、お互いに申し訳なさからセーブしていましたが、5歳のいまはなんなら戦力になりますからね。

自営業夫婦の良さは、2人で育児を回せる柔軟性

――夜や休日以外に、お子さんが産まれてから働き方はどのように変わりましたか?

田部さん:まず、効率が良くなりました。事実、毎日夜中まで仕事をしていた出産前と比較して、仕事をしている時間はかなり減ったのに、収入は1割ほどしか減っていないんですよ。

また、思い通りにならない子育てによって諦める力がつき、仕事の取捨選択をしやすくなった気がします。

 

里田さん:確かに。私も子どもを産むまでは無理をしたり、仕事を何より優先したりしがちでしたが、できる範囲でベストを尽くそうと思えるようになりました。当たり前ですが、人の命より重い仕事はないんだな、って……。

仕事をセーブすることで、関心のあるテーマについて勉強する時間ができたのも思いがけない副産物でした。(英子さん)

 

林田さん:私は逆に、自分のやりたいエンタメ系の仕事は、取材が夜なので、なかなかできなくなりました。代わりに育児系の仕事がぐっと増えて、いまはいただける仕事をがんばろうかな、と。(千紗さん)

里田さん:僕が変わったのは、時間の使い方ですね。以前に比べて、仕事のネタ集めや人脈作りが圧倒的にできなくなりました。分野的に、勉強会やセミナーが夜の時間帯や土日に開催されることが多いからです。(誠一さん)

 

林田さん:僕も以前は土日に、仕事をしたり、興味がある分野の勉強をしたりしていた気がします。ただ、働く時間が減っても、それほど収入は変わらないんだなと気づきました。(知行さん)

 

田部さん:私、夫がフリーランスで家事育児を分担できるのは、すごく助かっているんです。父母会や保護者会もローテーションで顔を出すようにして、意識的にネットワークを作っているので、1年後は小学校ですが、同じようにやればなんとかなるだろうと思っていて。でも、それはお互いがフリーランスならではの柔軟性あってこそなんですよね。

 

里田さん:同感です。自分が好きな仕事を続けられているのは、相手もフリーランスで融通し合えるからなんだなって、私も思っています。(英子さん)

Writer Profile
有馬ゆえ
有馬ゆえ

ライター、編集者。1978年、東京都生まれ。2012年に独立し、メディアや広告のコンテンツ制作に携わる。話を聞いて、人や物事の魅力を伝えるのが好き。趣味は、各種コンテンツ消費と男女アイドルウォッチ、パフェハント。妻で母です。

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