「医療費控除」とは、所得控除の一つ。控除額は1年間でかかった医療費に準じますが、その節税効果はどれぐらいなのでしょう? 意外な控除の対象となる費用とは? 「医療費控除」について解説します。
医療費控除の控除金額は?
医療費控除の額は、1年間に支払った医療費の額に準じます。まず、医療費の金額から10万円もしくは所得金額の5%のどちらか低い方をマイナス。次に、保険給付金などで補填された金額があれば、それも差し引いて、残った金額が医療費控除の額となります。最高額は200万円です。
家族がいる場合は、家族の中で一番税率(所得)の高い人が、全員分の医療費控除をまとめて受けた方がメリットを感じやすいといえるでしょう。家族全員分の医療費が200万円を超えることはめったにないでしょうし、同じ控除額でも税率が高いほど税金は安くなるからです。例えば、医療費控除の額が5万円のとき、所得税率5%の人なら2,500円、10%の人なら5,000円の節税になります。
医療費控除の対象になる費用
医療費控除の対象となるのは、「治療を目的とした費用」です。そのため、医師に支払った治療費だけでなく、治療のための薬代やリハビリ費用も対象となります。
医療費控除の対象となる費用の例
- 病院や歯科医院での治療費
- 入院費
- 処方箋に基づく薬の購入費
- リハビリ代、鍼灸、マッサージ代
- 子供の歯科矯正
上記に当てはまる場合でも、もちろん治療目的ではなければ医療費控除の対象にはなりません。身近な例では、日ごろの疲れを癒すためのマッサージ代が挙げられます。入院費の中でも病室をグレードアップするための「差額ベッド代」も、自己都合であれば対象にはなりません。反対に、噛み合わせの改善など医師が必要と判断した場合であれば、大人の歯科矯正も対象となる可能性があります。
医療費控除の対象とならない費用の例
- 予防注射
- 健康診断
- 病気予防のためのビタミン剤購入費
- 診断書作成費
- 美容歯科矯正
これらの共通点は、治療を目的としないこと。上記と同様に、病気を未然に防ぐことや美容が目的のものは、医療費控除の対象になりません。ただし、一般的に治療目的とならない費用であっても、「治療のために必要と医師が判断したもの」であれば、極端に高額でない場合は認められることもあります。
まだまだある! 実は医療費控除の適用が可能なケース
そのほか、医療費控除に適用されないと諦めがちな費用でも、控除対象になるケースがあります。
意外な医療費控除の対象となる費用の例
- 健康診断……病気が見つかったらOK
- メタボ検診の指導料 ※「積極的支援」はOK、「動機付け支援」はNG
- インプラント
- レーシック手術費用
- オルソケラトロジー治療(角膜矯正療法)の費用
- 眼鏡の購入費用……手術後の機能回復のため短期間装着するものなど、治療のために必要という医師の指示で装着するもののみOK
- 通院交通費(公共交通機関)……すべてOKだが領収書がなければ明細を作成すること
- 通院交通費(タクシー)……公共交通機関での通院が困難な場合のみOK。ただし自家用車のガソリン代、高速代などはNG
- 禁煙治療代……病院での治療費および医師の処方した薬の購入費のみOK
- 不妊治療・人工授精費用
一口で医療費といっても、その種類はさまざま。自己判断で「対象にならない」と決めつけてしまっては、大きな損をしてしまうこともあります。医療費控除の対象になるかがわからない場合は、医師や税務署に確認し、賢く控除を活用しましょう。