
個人でビジネスをしている方は、その事業規模が大きくなってくると法人成りを検討されると思います。しかし、一体どのタイミングで踏み切ればいいのか悩んでいる人もいるのではないでしょうか。そこで、法人成りのメリット・デメリットを解説します。
法人成りのタイミングはどう見極める?
そもそも法人成りとは、個人事業主が事業を法人化することです。一般的に、「課税売上が1,000万円を超えたとき」に法人成りをすると、最大2年分の消費税申告が免除されることもあり、節税の観点から見ると有効だとされています。
しかし、そのタイミングがベストなのかというと、必ずしもそうでもありません。たとえば、所得税(個人)の場合、課税所得が195万円以下であれば5%課税(330万円以下であれば10%課税)となりますが、法人税の場合(「中小法人の軽減税率の特例」を適用した場合)は800万円以下であれば一律で15%課税となります。そのため、売上高だけでなく、所得金額についても考慮する必要があります。
また、単純に税額だけでなく、ほかにも考慮すべき点はあります。法人成りのメリット・デメリットを確認してみましょう。
法人成りのメリット
(1)社会的信用
一般的に個人事業よりも法人(会社組織)の方が、社会的信用は高くなります。大きな取引や金融機関からの借入、従業員の募集などに有利になるケースが多いのはなんとなく想像できますよね。
(2)万一のときのリスクが少ない
個人事業の場合、商売の責任は事業上の財産だけでなく、個人の財産にも及びます。法人(会社組織)の場合、出資者は出資した金額を限度として責任を負うことになるため、出資者個人の財産に及ぶことはありません。
(3)個人ではできない、さまざまなものを損金扱いできる
- 代表者の報酬
- 出張日当(個人の場合は旅費交通費の実費分しか必要経費にならない)
- 経営者本人や家族従業員への退職金
(4)消費税の免税
前述の通りですが、たとえば2016年に個人事業で課税売上高が初めて1,000万円を超えた場合、2018年度から消費税申告が義務付けられます。しかし、2018年から法人成りをすると、その消費税申告を2年先送りすることができます。
※資本金1,000万円以上の法人の場合は設立1期目から納税義務が発生
法人成りのデメリット
(1)赤字でも税金の支払いが発生する
法人は赤字であっても法人の市民税・府県民税、約7万円がかかります。
(2)税務調査が入りやすい
法人は一般的に、個人事業に比べ税務調査が入る機会が増えます。
(3)複式簿記による経理処理
個人事業の場合は、青色申告の特別控除65万円を受ける場合のみ複式簿記による記帳が求められますが、法人の場合は必須の処理となります。
(4)社会保険の事業主負担
法人成りをすると、代表者1人でも社会保険に強制加入となり会社の社会保険料の負担が増え、さらにその手続きのための事務負担も増えます。
このように、法人成りのタイミングを見極めるためには、さまざまな角度から判断する必要があります。まずは金額面でのメリットがあるのかをシミュレーションし、法人成りのメリットがほかのデメリットを受け入れるだけのものであるかなどを慎重に検討しましょう。