個人事業主が知っておきたい法人化の5つのデメリット

個人事業主として開業したけれど、利益が出てきたので、法人化を検討し始めることはよくあります。法人化すれば、対外的な信用度が増すと同時に2期間の消費税が免税になる、節税になるといったメリットがあります。しかし同時に、法人化には次のようなデメリットがあります。

法人化の5つのデメリット

(1)赤字でも税金が発生

赤字に陥った場合、法人税は0円です。しかし、法人住民税の均等割が発生します。個人事業主も赤字の際に住民税の均等割が発生しますが、その金額は5,000円程度。一方、法人の場合は法人市町村民税が約5万円、法人道府県民税が約2万円の合計約7万円が最低でもかかります。

 

また、法人市町村民税と法人道府県民税は、資本金が1,000万円以上の場合や、従業員が50人超の場合、さらに高くなります。

(2)社会保険の加入が必須

株式会社や有限会社など、事業の種類を問わず、法人であれば、社会保険の強制適用事業所となり、社会保険の加入が必須です。社長一人だけの場合も強制加入となります。個人事業主の場合は、従業員が常時5人以上いれば、農林漁業、サービス業などの場合を除いて強制適用事業所となりますが、従業員が常時5人未満の場合は、社会保険の加入は任意となります。

 

社会保険に強制加入となると、保険料の負担は従業員と事業所の折半です。法人化して税金は安くなったけど社会保険料の負担が増えて、資金繰りが苦しいということにならないように注意しましょう。

(3)個人に戻す際は手続きが必要

法人化したけど、デメリットの方が多くなって個人事業主に戻そうと思ってもすぐにはできません。

 

具体的には、解散の登記と清算結了の登記が必要です。会社を解散するには、株主総会の特別決議か、株主全員による書面決議も欠かせません。解散決議後は清算手続きに移行し、清算の結了まで短くて2カ月半、長い場合は2年~3年を要します。

(4)役員報酬の金額は期中で変更できない

役員報酬は決算月から3カ月以内に決定し、定期同額でないと損金算入ができないルールがあります。

 

役員報酬を決める際には、法人税や給与所得にかかる所得税や住民税などができる限り節税できる金額を算出します。これは、役員報酬の金額によって給与所得にかかる所得税や住民税額が変わるからです。役員報酬を高額にしすぎたために支払うべき税額が増えてしまったということにならないようにしましょう。

 

<例>

  • 役員報酬:月額20万円 年額240万円 法人利益0円の場合
    法人税:7万円
    役員の所得税(控除額は基礎控除のみで算出): 5万6,000円
  • 役員報酬:月額30万円 年額360万円 法人利益△120万円の場合
    法人税:7万円
    役員の所得税(控除額は基礎控除のみで算出): 9万8,500円

 

また、計画よりも利益が出ず、赤字になってしまった場合も法人税額は変わらないことにも注意が必要です。

(5)税務調査が入る可能性が個人よりも高くなる

税務調査が実際に行われている件数と割合は毎年国税庁により公表されています。国税庁の「平成25事務年度 法人税等の調査事績の概要」「平成25事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によれば、実際調査を行った割合(実地調査率)は法人が約3%に対して個人は約1%となっています。

 

そのほかにも法人化のデメリットとして、税理士報酬が一般的に個人事業主よりも高いということもあります。法人化にはメリットばかりではありませんので、デメリットも含めて検討することをおすすめします。

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