取引先が倒産…回収が難しい代金は「貸倒引当金」として処理しよう

月末に振り込みを確認していて、取引先から代金が回収できていないことを発見。取引先の倒産や経営悪化で代金が回収できないとき、確定申告ではどのように処理すべきなのでしょうか。そのカギとなる「貸倒引当金」について解説します。

回収できない代金も課税対象になる

売り上げが回収できないデメリットは、大きく3つあります。

 

  1. 商品(サービス)を提供するための仕入れ代や経費、手間や時間が無駄になる
  2. 収入が減る
  3. 売り上げは立つため税金はかかる

 

入るはずだった代金が入らないため収入が減ってしまい、収入を得るために使ったお金や労力、時間が無駄になってしまうことはすぐに想像できるでしょう。ところが、売り上げが回収できないデメリットはそれだけではありません。実は、手元に入ってない売り上げにも税金がかかるのです。

 

会計上、売り上げは取引が発生した時点で生じます。たとえば、Aさんが作った商品をB商店に売った場合、一般的に売り上げを計上するのは、商品を売った日。その場でお金をもらっても、もらわず後で請求する約束をしても関係ありません。そのため、回収できていない代金も売り上げとして計上しなければならず、その分の税金も支払わねばならないのです。万一、取引先の倒産や経営悪化などで回収できなかった場合、その代金を「貸倒金」と呼びます。

回収不能の売り上げは「貸倒引当金」として処理する

所得税法では、経費とは、仕事上必要なものに支払っており、なおかつすでに支払いを済ませている代金を指します。しかし、状況によっては、回収できない可能性が高いけれど、まだ貸し倒れると決まっていない代金もあります。その際、例外的に貸し倒れる恐れのある売り上げを「貸倒引当金」という勘定項目で経費として計上することができます。

貸倒引当金の計上方法について

貸し倒れる恐れのある売り上げの全額が貸倒引当金として計上できるわけではありません。貸倒引当金として経費計上するには、「一括評価」と「個別評価」の2つの方法があります。

一括評価

取引先から代金がもらえるかどうかわからないが、代金をもらえなくなったときのリスクを少なくするために前もって貸倒引当金として経費計上すること。年末における売掛金残高の5.5%の金額が必要経費に認められます(金融業の場合は3.3%)

個別評価

取引先が倒産などして代金がもらえない可能性が高い場合、その事由に応じた金額を貸倒引当金として経費計上すること。

 

どちらも貸倒引当金として認められるのは、契約不履行や取引停止があった最も遅い日から1年以上経った日です。このようにルールが設定されているのは、貸倒引当金を多く計上して所得を圧縮すると、租税回避につながるからとされています。

貸倒引当金の注意点

「貸倒引当金」を経費計上する際には、3点の注意点があります。

 

1つ目は、貸倒引当金として経費計上できるのは、基本的には青色申告者のみだということ。白色申告者では、この特権を受けられない可能性が高いです。

 

2つ目は代金を回収するために努力をしている必要があることです。代金を回収するために何もしていなければ、代金を回収できない恐れがある売り上げとはみなされません。

 

回収努力の具体例としては、「料金を払ってください」という内容の文書を内容証明で送るのが望ましいでしょう。自分から回収しようとする意志を見せなければ、経費に計上するのは難しくなります。

 

3つ目は、代金を回収できない恐れがある売り上げを貸倒引当金として経費計上するためには一定期間必要ということ。代金支払いの約束日を数カ月延ばされたぐらいでは、経費として認められるのが難しいようです。前述の「貸倒引当金の計上方法について」にもありますが、具体的には1年以上経過したものが貸倒引当金として経費計上できます。また、取引先から一部でも支払いがあれば、すぐには経費計上が認められにくく、そこから1年以上の期間が必要です。

 

取引先から代金が回収できなければ、自分の事業が経営悪化に陥ることも珍しくはありません。まずは貸倒引当金を計上して、もしもの場合に備えましょう。

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