個人が住宅ローンなどを利用し、マイホームを建てたり、増改築などをしたりするときに一定の要件を満たすと受けられる「住宅借入金等特別控除(以下、住宅ローン控除)」。確定申告時に申告すれば、所得税が軽減・還付されるとあって、その節税効果が注目されています。
しかしながら、個人事業主の場合は自宅の一部を事業所としている方も多く、住居にまつわる経費の計上方法を一歩間違えると、住宅ローン控除の適用から外れてしまうこともあります。住宅ローン控除の適用要件を振り返りながら、その注意点を確認していきましょう。
住宅ローン控除の適用要件
住宅ローン控除の適用要件は非常に細かく、申請するには以下の7点を満たさなくてはなりません。
- 1年間のすべての所得の合計が3,000万円以下であること。
※年間の収入から経費等を引いたものです。 - 10年以上のローンを組んでいること。
- 購入した日から半年以内に入居を始めていて、毎年12月31日まで住み続けていること。
- 居住目的であること。(※別荘は適用外)
- 配偶者、親族など自分の身内から購入したものでないこと。
- 購入した住居の床面積が50平方メートル以上であり、その2分の1以上の部分が専ら自己の居住の用に供するものであること。
- 中古の場合、築20年以内であること(※マンションの場合は築25年以内)または、新耐震基準をクリアしていること。
自宅兼事業所の経費はどうなる?
個人事業主の場合、家賃や水道光熱費などの費用は、事業用であれば経費として落とすことができます。しかし、事業用で事務所を構えている方はその全額を経費とすることができるのですが、自宅兼事業所の場合だと、事業で使用した部分のみしか経費としては認められません。
■賃貸の場合
たとえば、賃貸で家賃が月額9万円、水道光熱費が月に1万2,000円で、事業割合が30%だとすると、経費として計上できるのは以下の費用です。
▽地代家賃=9万円×30%×12カ月=32万4,000円
▽水道光熱費=1万2,000円×30%×12カ月=4万3,200円
そのほか、固定資産税や火災保険料も同様に按分した金額を経費にできます。
■持ち家の場合
持ち家は家賃が発生しないため、家賃を経費として計上できませんが、その建物自体を減価償却費で落とすことができます。
たとえば、2,000万円の新築の木造建物を購入し、事業割合が30%だとすると、以下の通りです。
▽減価償却費=2,000万円×償却率0.046×30%=27万6,000円
そのほか、光熱費などは賃貸の例と同様に計算します。また、住宅ローンの利息も経費計上できます。
この上、住宅ローン控除を受けているとなると、借入の残高の約1%の税額控除を受けることができます。
住宅ローン控除を受けている場合の注意点
しかしながら、最初に説明した住宅ローン控除の適用要件6にもあるように、住宅ローン控除を受けるには「床面積が50平方メートル以上であり、その2分の1以上の部分が専ら自己の居住の用に供するものである」必要があります。よって、事業割合を50%以上で設定してしまうと、住宅ローン控除を受けられなくなります。また、「専ら自己の居住の用に供するものである」必要があるため、事業で使用する部分には住宅ローン控除を適用できません。
ただ一方で、所得税法では事業割合を10%以下とすると、住宅ローン控除を全額受けることができると定められています。そのため、事業割合を10%以下とすると節税効果を高く受けることができますので、節税対策の一つとするのもよいでしょう。
住宅ローン控除を受ける方が得なのか、経費として計上する方が得なのか――。事前に計算した上で節税対策を施さないと、結果的に損をする可能性があるので注意しましょう。