
事業が忙しくなってくると、人手を増やすのが一般的ですよね。ただ、一口に「人手を増やす」といっても、人を雇って給与を払う方法と、外注して外注費を払う方法の2つがあります。それぞれ、どんな違いがあるのでしょうか。
給与には何のメリットもない!?
雇い主が支払う金額と手間だけでいえば、外注と比べて、給与を払うことには何のメリットもありません。
雇用して給与を支払った場合
(1)消費税を節税できない
1年間の課税売上が1,000万円を超えると、消費税を納める義務があります。給与は必要経費として算入することができないため、課税売上は割高に。消費税も膨らむことになります。
(2)社会保険料の負担がある
雇用契約の場合は、社会保険の加入義務が必須です。雇用者は、従業員の社会保険料を半分負担することになります。
(3)事務手続きの手間がかかる
従業員ごとの源泉所得税の納付手続きや年末調整の事務作業が必要です。
雇用よりメリットの多い外注
外注をして外注費を支払うと、雇用に比べてトータルで支払う金額と手間は少なくなります。
外注をして外注費を支払った場合
(1)消費税を節税できる
外注費は、消費税計算において必要経費に算入することができます。そのため、課税売上を抑えられ、消費税を節税できます。
(2)社会保険料を負担しなくてよい
雇用ではないので、当然、社会保険料を負担する必要はありません。
(3)例外を除き、事務手続きをする手間がない
原則的に、源泉所得税の徴収はありません(所得税法第204条第1項に該当する報酬・料金を除く)。また、年末調整の必要もありません。
雇用と外注の線引きは?
それならば、すべて外注にしよう……と考えがちですが、ある仕事の業務形態を雇用とするか外注とするかは、実は自由に決められるものではありません。
国税庁では、以下の基準を設けています。これらすべてに「はい」と答えられる場合、その業務形態は外注と認められる可能性が高いといえます。
業務形態が外注と認められる条件
- 従業員でなくても誰でもできる仕事である
- 仕事の指示を出したり出されたりする立場ではなく、勤務時間が管理されていない。報酬は、労働時間ではなく成果物に対して支払われる。
- 成果物を納品しない以上、報酬は支払われない。
- 仕事に必要な経費を負担しない。
これまで外注費として処理していたものが、税務調査によって給与と指摘されることもあります。すると、過去に遡って消費税の計算のやり直しをしたり、新たに従業員分の源泉所得税と社会保険料が加算されたりと、大きな負担が発生することになります。
このように、外注することのメリットは大きいのですが、その線引きはやや曖昧なものです。判断に迷うようであれば、まずは税務署や税理士などの専門家に相談してみましょう。