資金繰りや集客はどうしてる?飲食店経営者のホンネ

長年の修行を経て、念願の飲食店を独立開業! ……しかし、「都内で1年続く店舗は3割」とまでいわれる、競争の激しい世界。腕を磨くことはもちろん、あらかじめ入門書などを徹底的に熟読して備えることも大切でしょう。でも、飲食店経営の入門書には、一体どのようなことが書いてあるのか? 現場の事情にどの程度則しているのか? 今回はそれぞれジャンルの異なる飲食店を運営する3人のオーナーにお集まりいただき、その実態を語り合っていただきました。


Nさん:オーセンティックバー経営者


Iさん:和食店経営者


Oさん:シェリー酒専門バル経営者

どうする?テナント選びや開業資金の調達

――まずは皆さんそれぞれ、独立のきっかけと店舗の運営歴を教えていただけますか。

Nさん :もともと、親がこの街で定食屋を開いていたんです。僕はずっとバーで働いていて、そろそろ独立をと考え始めたところ、親が店を畳むというので、じゃあ自分がそのままそこでバーをやろうと決めたのが16年前になります。その後に一度、テナントを移転して現在に至ります。

 

Iさん:うちは2店舗あって、本店はもう創業50年になります。私が担当している店舗も、今年で43年目。先代から引き継いで20年くらいでしょうか。

 

Oさん:僕が一番新参者で、オープンからまだ3年。いくつかの飲食店で修行して、独立にこぎ着けました。

――皆さん個々に事情は異なりますが、自ら店舗を運営するにあたり、やはり入門書の類いには目を通すものなのでしょうか。

Iさん:うん、僕は一応ぱらぱらと目を通しましたね。何かしら役に立つことが書いてあるんじゃないかと。ただ、大昔のことなので、それがどのくらい役に立ったか、もう覚えていませんが(笑)。


Nさん:僕はまったく読まなかったです。ずっと現場にいたので大抵のことは理解していましたし、何か分からないことや困ったことがあったら、本を読むより先輩バーテンダーに聞くことが多いですね。


Oさん:僕はいくつか書店で手には取りましたけど、「この著者は実際に現場を経験している人じゃないな」と感じるものも多くて、あまり参考にはしなかったですね。やはり現場で身に付けたことが一番役立ちますよ。

――皆さんは同じエリアで商売を営まれていますが、この街、そして今のテナントを選んだ理由は何だったのでしょうか。

Iさん:うちの場合は判断したのは先代ですが、この街に目をつけたのは、大手銀行がすべて集まっていたからだと聞いています。すべての銀行がそろう街には企業が集まる、というのが先代の持論でした。実際、うちは110席あるので、人が集まるエリアであることは重要な条件なんです。


Nさん:僕も親が持っていた物件を改装しただけなので、物件探しの作業はありませんでした。ただ、まだ界隈にオーセンティックバーがほとんど存在しなかった時代だったので、この場所で本当にいいのか、1カ月くらい人の流れを観察してリサーチしました。人が通る場所でなければ話にならないですからね。


Oさん:僕の場合はこの街に落ち着いたのは本当にたまたまで、いい物件に出合ったからここに決めた、というだけなんです。希望していた予算と広さにマッチしていたことに加え、外からの見え方にはこだわりがありました。


Iさん:ちょうどOさんが表の看板を設置するときに私、通りがかったんですよ。角度や高さなどかなり細かく注文をつけていたよね(笑)。


Oさん:そうそう! 外から窓越しに、店内や照明がどう見えるかなど、けっこう具体的にイメージしていましたね。

――では、開業にあたり、資金調達に苦労はありませんでしたか?

Nさん:僕は幸い、内装と最初の仕入れにかかる費用だけでしたから、初期費用の面では楽でした。トータルで500万円以内に収まっています。


Oさん:僕は公庫に借り入れを申し込みました。よほどおかしな計画を立てないかぎり、だいたい自己資金の倍額くらいは借りられると思いますよ。ただ、この街のネックは、テナントの敷金が高いこと。内装は自分でDIYして安くあげましたけど、敷金だけで200万円かかっていますからね。


Nさん:え! Oさんの店のサイズで200万円はちょっと高いね。うちのほうがOさんの店より広いけど、100万円で済んだよ。


Oさん:まあ、たしかに高いと感じましたけど、敷金は最後に返ってきますからね。物件自体を気に入ったので、そこは思い切りました。

繁盛の秘訣は飲食店同士の横のつながり

――開業当初の資金繰りや集客については、どのように考えていましたか?

Nさん:僕やOさんは、今でこそスタッフを雇っていますが、最初は一人で始めているので人件費がかからないんですよ。自分が最低限食えればいいし、最初のうちは利益が出るとすべて仕入れに回していました。あまり焦りはなかったですね。


Iさん:うちは代替わりの際に借金して店内をリニューアルしたので、宴会など団体客の誘致などに力を入れました。宣伝のやり方にもいろいろありますが、宴会を取るには「ぐるなび」が効果的で、個人客には「ホットペッパー」がいいとか、いろいろ発見もありましたね。客層だけじゃなく、「食べログ」でも何でも、店によって相性の良し悪しはあると思います。このあたりはお見合いに近いかも。


Oさん:僕は宣伝の類いはまったく行っていないんです。店の外に看板を出しているだけ。ただ、今の場所で開業する前、世田谷区の交通の便の悪い場所にあるスペイン料理屋を任されていたので、当時のお客さんがけっこう来てくれますね。最初から、「あの辺鄙な場所に通ってくれた人たちなら、どこでやっても来てくれるだろう」という安心感がありました(笑)。


Iさん:お客さんの入れ方にも、ちょっと気を遣うよね。うちの場合、どうしても年輩のお客さんが中心になるので、若い人にはなるべく外から目立つ場所に座ってもらって、老若男女が入りやすい雰囲気を演出したりしています。着物姿のご婦人などは、カウンターに座ってもらうと店内が華やかになっていいですね。


Nさん:前に勤めていたバーでは、通りすがりの人から見える位置には、見栄えのいいお客さんを座らせるようにしていました(笑)。お洒落なカップルとか。今の店は外から中が見えないので、そういうことはしていませんが。

――お店同士の横のつながりも多いようですね。

Iさん:この辺りは特にそうですね。お客さんから帰りがけに、「2軒目にどこかオススメありますか?」と聞かれることが多いので、NさんやOさんの店にご案内することがよくあります。逆に、お二人のお客さんから宴会の予約をいただくこともありますし。


Oさん:クチコミはやはり重要ですよね。人が人を呼ぶことでもっている部分は大きいですよ。


Nさん:とりわけこの3店舗は、相互にお客さんを紹介し合っていて、いい関係が築けていると思います。それぞれ、自分の仕事が終わったあと、普通に互いの店で飲むことも多いですしね。

――会計についてはいかがでしょう。皆さんどう処理されていますか?

Iさん:うちは有限会社なので、税理士さん任せです。従業員も20人ほどいますしね。


Oさん:僕も税理士さんにお願いしています。最初は自分で処理していたのですが、慣れない作業がもう大変で大変で……。営業どころじゃなくなったので、プロに任せることにしました。


Nさん:「確定申告がつらい」ってメールしてきたくらいだったよね(笑)。僕は今でも自分で地道にやっています。たしかに伝票整理など大変なので、そろそろ税理士さんにお任せしたい気持ちもありますが……。


Iさん:会計面で困ったのは、先代の父が急逝したときですよ。店の売上げが全部入った通帳が1年以上も凍結されて、カード決済の入金もすべてそこへ入るから、運転資金のキャッシュがなくなってしまって。自分個人の貯金まで使ってなんとか乗り切りました。

――それでは最後に、店舗経営をしていくうえで皆さんの今後の目標を教えてください。

Nさん:気がつけば自分もいい年齢になってきましたから、そろそろ“育てる”側にまわって業界に恩返しをしたい思いはありますね。実際、うちで働いていたスタッフが去年、独立したので、今また新しい人に来てもらっているんです。今は多店舗展開などよりも、育成にやり甲斐を感じます。


Iさん:僕も同感。うちは地方から来ているスタッフも多いので、彼らがいつか地元へ帰った時、胸を張って独立できるように面倒をみてやりたい。たまに、スタッフの親御さんを店に招待することもあるんです。皆さん、息子が立派に働いている姿を見ると、安心して帰られますよ。


Oさん:僕は早い時間帯の集客をテコ入れしたいですね。そのためにフードメニューのリニューアルを考えている最中で、まだまだ現状に甘んじず、試行錯誤しながらいろんなことに取り組んでいきたいと思っています。

Writer Profile
友清哲
友清哲

1974年、神奈川県出身。フリーライター&編集者。1999年よりフリーランスで活動。雑誌、Webで精力的にインタビュー、執筆を行う。『日本クラフトビール紀行』(イースト新書Q)『一度は行きたい「戦争遺跡」』(PHP文庫)など著作も多数。

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