熾烈な勝負の世界で生きる! 女流雀士はどうやって稼いでいるの?
2020.02.18

紫煙に満ちた部屋で、険しい顔の男たちが麻雀牌を握る――。雀荘といえば、そんな淀んだメージを持っている人も多いのではないでしょうか。しかし、麻雀は男性だけの娯楽ではありません。プロの資格を持つ雀士には女性も多く、なかにはアイドルと見紛う容姿を備えた女流雀士だって存在しています。

 

でも、プロの雀士といっても、職業としての実情は実にミステリアス。彼らは一体、どのようにしてお金を稼いでいるのでしょうか? 日本プロ麻雀連盟に所属する鈴木彩夏さんに、知られざる職業雀士の生活について聞いてみました。

プロ雀士を目指したきっかけ

――まずは麻雀を始めたきっかけから教えてください。

私の場合、生まれ育った家が雀荘を営んでいたので、物心ついたときから身近な娯楽だったというのが大きいですね。幼い頃はドンジャラから始め、そのうち家族で卓を囲むようになり、自然にルールを覚えました。真剣にやり始めたのは、18~19歳くらいで、21歳でプロになっています。

――なぜ、プロになろうと思ったのでしょう?

もともと麻雀が好きだったことが一番の理由です。私の場合、親が経営する店(雀荘)があったので、学校を卒業した後、そのまま店で働くようになりました。今働いているこの「麻雀倶楽部 まあいいじゃん」(東京都品川区)も、親から兄が引き継いで経営している店です。

 

ここでスタッフとして働くうちに、母から「(プロテストを)受けてみたら?」と勧められ、さほど深く考えることなく、挑戦してみることにしました。

――麻雀のプロテストでは、どのような試験が行なわれるのでしょうか。

筆記と面接と実技の3つですね。たとえば筆記試験では、「この場合の待ち牌は何でしょう」といった出題がされます。実技試験ではプロの方が見ている前で、実際に受験者同士で麻雀を打つのですが、これはすごく緊張しました。たぶん、牌の切り方や手の作り方など、技術的なところをつぶさにチェックされていたのだと思います。面接はどこを見られるのか、いまだによく分かりません(笑)。

――かなりの難関だと耳にしますが、鈴木さんはすんなり合格されましたか?

いえ、1回目は落ちてしまいました。2回目の挑戦で合格して、なんとかプロの資格をもらうことができたんです。でも、基本的にちゃんと麻雀についての知識があれば、言われているほど難しいものではないと思います。

 

ただ、二次試験を通過した後も、第三次テストが半年ほどあるので、本業が忙しい人には不向きかもしれません。ライセンスは更新の必要はないものの、プロになるとその団体のリーグ戦に参加しなければなりません。およそ月に一度、昇級を賭けて試合に出る必要がありますから、やはり時間の余裕がなければ難しいでしょうね。

プロ雀士の“勤務形態”はどうなっている?

――現在、日々どのような仕事をしているのでしょうか?

基本的には店のスタッフとして働いています。お客さんにドリンクを運んだり、掃除をしたり、雀卓を片付けたり。そして何より、雀荘のスタッフというのは麻雀を打つのが仕事ですから、4人に満たない卓に参加します。このあたりはプロになったからといって、大きくは変わりません。

 

私は息子がいるので、たいてい朝6時くらいに起きてご飯の支度などをして、店のオープン(13時~)に合わせて出勤する毎日です。通常は22時まで働いて、夜番のスタッフと交代して帰ります。

――育児との両立は大変でしょうね。ほかに、プロ雀士としての仕事は?

プロ雀士としては、ほかのお店にゲストとして呼ばれて行くのがメインです。その場合、ドリンク運びなどはせず、ただひたすらその店のお客さんと打つだけ。私の場合は自分の本拠地があるので、そういったイベントに呼ばれる機会は少ないですが、多い人は週に3~4店舗まわる方もいます。

――ゲスト雀士として招かれた場合、報酬は発生するのでしょうか。

そうですね。そのお店からゲスト料という形で謝礼をいただきます。金額は店や雀士の人気によってさまざまですが、私は正直、まだまだ高いほうではありません(笑)。

――しかし、やはり客層は男性中心でしょうから、綺麗どころの女流雀士がゲストとなると、喜ばれるのでは?

たしかにそういうニーズがあるのは事実で、最近は女流雀士が増えていて、10代の子も珍しくありません。ただ、「強い人と打ちたい」というお客さんも多いですから、必ずしも女流が喜ばれるということはないと思いますね。

プロ雀士は女流のほうがお金になる!?

――このほか、プロ雀士としての収入源は?

たとえば団体のリーグ戦で勝ち上がり、決勝まで進むと数百万円レベルの賞金がもらえますが、これはごく一握りのプロです。やはり、イベントに招かれたり、メディアに出演したりするのは貴重な収入源ですが、そう頻繁に機会があるものではないですから、なかなか稼げる職業とは言い難いかもしれません。実際、男性のプロは、サラリーマンと2足のわらじで活動されている人も多いですから。

 

また、私が所属する団体では女流雀士だけを集めて、DVDやカレンダーを制作して販売しています。DVDといっても、グラビアに近いもので、麻雀とは直接あまり関係のない内容ですが、好評のようです。これも出演者には出演料が支払われているはずです。

――ずばり、プロ雀士の仕事は、年間でどのくらい稼げる仕事なのでしょうか。

上と下の差が非常に大きいので一概にはいえませんが、鳳凰位と呼ばれるトップ雀士や、団体を統括するレベルの人であれば、年収数千万円に達するといわれています。また、最低でもどこかの雀荘を本拠地にして、イベントやメディア対応などをマメにこなしていれば、300~400万円くらいの収入は得られるのではないでしょうか。

――では、鈴木さんが今よりさらに稼ごうと思ったら、どうするのがベストなのでしょう。

雀士として収入を伸ばすためには、やはりリーグ戦で頑張って、タイトルを獲ることです。そうすればいろいろなメディアからオファーがかかりチャンスが広がるので、イベントその他の収入がもっともらえるようになります。早くもっと上のクラスにあがれるよう、頑張ります!

Interview
鈴木彩夏さん
鈴木彩夏さん

日本プロ麻雀連盟28期生。東京都品川区の「まあいいじゃん」の専属プロとしても活動中で、五反田界隈を中心にファン層を広げている。

▼あやぱんBlog
http://ameblo.jp/7534ayapan/

Writer Profile
友清哲
友清哲

1974年、神奈川県出身。フリーライター&編集者。1999年よりフリーランスで活動。雑誌、Webで精力的にインタビュー、執筆を行う。『日本クラフトビール紀行』(イースト新書Q)『一度は行きたい「戦争遺跡」』(PHP文庫)など著作も多数。

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