○○なら確定申告不要?無申告は税務調査対象外?確定申告の都市伝説と真実

開業後、初めて経験する確定申告について、同業者の先輩や、身近な個人事業主仲間に相談する機会も多いのではないでしょうか。そんなとき、耳にするのがまことしやかに囁かれる“都市伝説”。実際に個人事業主から問い合わせの多い都市伝説について、正しい知識を解説します。

開業直後や売り上げが低い場合は確定申告をしなくていい?

もっとも多いのは、確定申告が必要か否かの基準についての誤解です。個人事業主の場合は、法律上、事業収入から必要経費と所得控除を差し引いた金額(課税される所得金額)に所得税率を乗じ、そのあとに配当控除を差し引いても残額がある(基準所得税額が1円以上)ならば、確定申告が必要です。それにも関わらず、下記のような誤解があります。

「○○ならば確定申告をしなくていい」という都市伝説の例

開業後2年間は所得税の確定申告が不要

開業期間と確定申告の義務は無関係なので、誤った情報です。個人事業主は2年前の売上高が1,000万円以下の場合には消費税が免税される(消費税の確定申告が不要)制度があります。この制度が誤解され、所得税の確定申告も2年間は不要という都市伝説が広まったのかもしれません。

 

月間の売り上げが20万円以下の場合は確定申告が不要

年間の売り上げが103万円以下の場合は確定申告が不要

冒頭の解説の通り、確定申告の義務は売り上げではなく、基準所得税額で判断されるので、これらも誤りです。それぞれ、「1カ所から給与の支払いを受けており、給与所得と退職所得以外の所得金額が20万円以下の場合は確定申告が不要となる」また「パート・アルバイトなどの給与所得者は、年収103万円以下の場合に所得税が非課税となる」という制度が曲解されたものと考えられます。

儲かっていなければ税務調査の対象にならない?

確定申告の義務と同様に、税務調査に関する誤解も多いようです。その例は、以下の通りです。

「○○ならば税務調査の対象にならない」という都市伝説の例

税務調査は主に会社(法人)を対象にしている

税務署には法人税などの調査を担当する「法人課税部門」と、個人事業主の所得税などの調査を担当する「個人課税部門」が、別々の部署として存在しています。つまり、個人事業主も立派な税務調査の対象なのです。なお、国税庁によれば、2014年事務年度の申告所得税の各種調査件数は、約68万2千件にも及んでいます。

 

売り上げが多くなければ税務調査の対象にならない

税務調査には高額、悪質な案件を対象とする「実地調査」、文書や電話などで連絡して申告内容の是正を行う「簡易な接触」など、いくつかの種類があります。国税庁によれば、2014年事務年度での簡易な接触で指摘された申告漏れ所得額は1件あたり約6万6,000円、追徴税額は5万円でした。税務調査というと高額な追徴金を支払うイメージがありますが、少額な案件も税務調査の対象となっていることが分かります。

 

そもそも確定申告をしなければ、税務調査の対象にならない

もちろん、答えはNO。そもそも、税務署はあらゆる方法で無申告状態を把握します。その参考となるのは、例えば取引先の領収書や請求書、売上先が税務署に提出する法定調書などです。取引先や売上先に税務調査が入り、芋づる式に無申告状態が見つかってしまうこともあるでしょう。これからは、以上に加えてマイナンバーの開始で無申告者がより捕捉されやすくなると考えられます。

 

確定申告や税金に関して不明な点があったとき、独断で都合の良い解釈をすると、後々税務署から指摘を受けたり、追徴金を支払わなければいけなくなったりする可能性があります。少しでも不明な点があれば、税務署や税理士などの専門家に相談しましょう。

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