こんにちは。ライターの斎藤充博です。今日はJR八王子駅から徒歩3分のところにあるコワーキングスペース「8Beat(エイトビート)」に来ております。
こちら、一見してシンプルなコワーキングスペースかと思いきや、実はハード面とソフト面、共にこだわりのある空間だったんです!
スマートロックがあれば営業時間に縛られない
案内してくれたのはオーナーの小柳さん。8Beatは入口からしてちょっと変わっているそうです!
小柳さん:うちではスマートロックを使っています。「Qrio(クリオ)」というスマートフォンのアプリでドアを開け閉めできるようになっているんですよ。
斎藤:それって普通の鍵とどう違うんですか?
小柳さん:アプリをインストールしてもらうと、いろいろな権限の設定ができるんですよ。私は管理者権限を持っているので、インターネットを通じて離れたところから鍵の開け閉めができたり、オートロックの設定ができたりするんですよ。利用者さんの権限だと、24時間いつでも鍵の開閉が可能です。
斎藤:え! じゃあ利用したいときにいつでも使えるんですね。
小柳さん:一応、営業時間は9:00から21:00(土日祝は19:00)と決めていて、その時間に私かスタッフが常駐しています。でも、会員さんから見ると、営業時間の概念はなくなっていると思います。
斎藤:忙しいときは、ここで徹夜の仕事もできちゃうんですね。
小柳さん:システム的にはそうです。ただ、実際のところ営業時間外に使っている方ってあまりいないんですが(笑)。
また、権限を渡す会員は一人ひとり面談をしてきちんと審査をしています。今のところ会員数は40人くらいで、目の届く範囲です。こういうことができるのは、規模の小さいコワーキングスペースならではと思います。
斎藤:なるほど。セキュリティ面を考えると、ある程度顔見知りだから成立するんですね。
開放的なコワーキングスペース
8Beatの中はこんな感じ。開放的な雰囲気なのは、通りに面した窓が大きくて、光がたくさん入ってくるからでしょう。なお、固定席はなくて全てフリーアドレスです。
パーティションの奥には、小さな打合せ用スペースが2つあります。右側にはホワイトボードが置いてあります。
左側のスペースにはモニターが付いています。
小柳さん:ここでは「CoderDojo八王子」という無料のイベントを定期的にやっています。子どもたちが集まって、自由にプログラムやITに触れられるイベントです。大人もメンターとして参加するのですが、子どもたちに“教える”のではなくて、ITの環境を作るだけです。教材などはなく、子どもたちに何をやりたいか考えてもらい、自由に作業してもらいます。
斎藤:子どもたちの自主性に任せられているんですね。それって、プログラムが全くわからない大人でも参加できるんでしょうか?
小柳さん:大人はダメですね!
斎藤:だめかー。いや僕がやってみたいなって思っただけなんですが。
小柳さん:ああ、それだったら大人向けのプログラミング教室も別であるんですよ。参加条件は「プログラムに触ったことない大人」です。ぜひ来てみてくださいよ。
斎藤:なんてかゆいところに手が届くイベント。行ってみたいです。
3Dプリンタやペンタブレットまで!? 貸出備品の充実っぷりがすごい
無料で貸し出してもらえる備品の棚がこちら。ごちゃっとしていますが、よく見るとかなりいろいろなものがあります。
- 外付けキーボード
- 外付けモニター
- マウス
- スキャナ
このあたりはまあ、定番かなという感じはするのですが、ほかには……。
- 物撮り用のライティングボックス
- ワコムのお絵かき用ペンタブレット
- ラミネーター
- 小型3Dプリンタ
このコワーキングスペース探訪の連載をしていて、ここまでそろっているのは見たことがない。
スタッフの荒井さんに聞いてみました
斎藤:ペンタブレットが置いてあるのって珍しくないですか。僕はウェブ記事で絵を描くこともあるので、これがあるのメチャクチャ便利ですよ!
荒井さん:そうですか? だんだんもらい物なんかを置いておいたら、増えちゃったんDですよね。
斎藤:撮影用のライティングボックスもありますが、ここで使うことはあるんですか?
荒井さん:時々使いますよ。8Beatには3Dプリンタがあるので、出力したものをきれいに撮影するときに使います。
斎藤:なるほど……。
荒井さん:実はついこの間まで、人間の形をそのままスキャンできる大型3Dスキャナを近隣の企業から預かっていたんですよ。その間に人をたくさんスキャンして、3Dプリンタで出力して遊んでいました。
荒井さん:たとえば、これ(写真上)。灰色の人形は八王子のご当地アイドル「はちぷり」のメンバーです。本人をスキャンしています!
斎藤:超楽しそう。でも、DMアイドルなんてスキャンしてしまっていいのか……。
荒井さん:女性はスキャンされたい人多いですね。コスプレしたカップルがスキャンしていったり、妊婦さんがお腹の大きい状態を記念にスキャンしていったり……。
斎藤:マタニティフォトならぬ、マタニティスキャンとは……! 新しい。
荒井さん:3Dスキャナは返してしまったのですが、3Dプリンタを使いたい人は僕に言ってもらえればいつでも使えますよ。
喫茶店よりうまいコーヒーを飲めてしまう
荒井さんはコーヒー好きな人で、自分で焙煎したコーヒーを淹れてくれます。
僕は最近コーヒーが好きでよく飲みますが、自分で豆を焙煎するって相当ですよ。喫茶店でも焙煎をしているところは限られます。
しかも入れてくれたカップがウェッジウッドだった。コワーキングスペースの取材に来て、こんなにいいことがあるなんて……!
斎藤:ははは。これはうまいですね。雑味が全然ない。
荒井さん:コーヒーってコミュニケーションツールにもなるんですよ。ここでコーヒー飲んでいる人がいたら、「ちょっとおれにもちょうだい」なんて人が集まってきますから。あとは、「ケーキを買ってきたからコーヒーを淹れてほしいな」って言われて、会話が始まることもあります。
斎藤:そういうきっかけがあるのってありがたいですね。
先行するコワーキングスペースを参考にノウハウを積み上げた
斎藤:そもそも、なぜ八王子でコワーキングスペースを始められたのでしょうか。
小柳さん:僕の地元が八王子で、本業はソフトウェア開発なんです。3年くらい前に「サイバーシルクロード八王子」っていう、商工会議所が手掛けている地域の産業振興団体に参加したんですよ。そこで「人が集まれる拠点が欲しい」っていう話になりまして。
そのとき、僕はコワーキングスペースなんて知らなかったのですが、メンバーの中に7F(大宮のコワーキングスペース)を利用されている方がいたんですね。その人にコワーキングスペースの概念を教えてもらって「ああいうの作りたいね」って話になりました。
立ち上げた後は実際に7Fの星野さんにお会いして運営のやり方を教えてもらったり、Co-Edo(日本橋のコワーキングスペース)の田中さんの運営者勉強会に参加したりして、ノウハウを積み上げていきました。
斎藤:なるほど。ただ、コワーキングスペースとしては立地がちょっと郊外ですよね。始めたときは集客が大変だったんじゃないでしょうか。
小柳さん:実は、立ち上げた直後は本当に後悔しましたね(笑)。8Beatは現在3年目ですが、会員が増えて収益が出るようになったのは2年目くらいからです。
荒井さん:ただ、八王子も都心に負けていない部分があると思っています。都心だと、街が大きすぎて意外と使いにくく感じることがありませんか。たとえば新宿だと、ちょっとした文房具を買いに行くのにも、世界堂まで行かないといけないような(笑)。
斎藤:確かに八王子って街がぎゅっとつまっている印象です。
荒井さん:ここはドンキホーテも100円ショップもすぐそこにあって、けっこう便利なんですよ。
金融機関とビジネスモデルの相談ができる
斎藤:設備は見てきましたが、8Beatならではのソフト面での特色ってありますか。
小柳さん:日本政策金融公庫の方が月に2回ここに来て、創業支援の相談会を開いてくれています。ビジネスモデルの有望性を一緒に検討してくれて、そこから会員さんの考えたビジネスに対し、融資につながることもありますね。
斎藤:それはすごい。一番相談したいけど、しにくい部分ですよね。
小柳さん:創業って、やっぱりビジネスモデルを磨くことが一番重要だと思っています。事務や経理面の細かい話だったら、それこそマルナゲさんなりの外部サービスに頼んじゃえばいいわけです。僕らが手伝う必要はないかなと。
斎藤:思わぬところで媒体的にいい言葉が出てびっくりしました(笑)。
小柳さん:それから八王子に引っ越してきたフリーランスの方でも、ここに来れば地元の人とのつながりを持てるというのはメリットですね。八王子は歴史のある街で、人間関係が濃い地域だと思うんですよ。
そういう手伝いができるのって、八王子でやっているコワーキングスペースならではだと思いますよ。
まとめ
事前に公式サイトを見ていたのですが、これほどまでにいろんな物がつまっているとは思いませんでした。小柳さんも荒井さんも一見ひょうひょうとしていますが、しっかりとコワーキングスペースに対して熱い気持ちを持っていて、独特な雰囲気です。
みなさんも、ぜひ利用してみてください。そうそう、いただいたコーヒーは本当に絶品でしたよ!