【コワーキングスペース探訪記】藤沢「NEKTON」はキッチン併設! 料理人の腕試しの場としても機能する新しい形態

こんにちは、ライターの井口エリです。

 

今回は「日本一メシのうまいコワーキングスペース」を掲げているスペースがあると聞き、神奈川県の藤沢へやってまいりました。現在藤沢駅にて2店舗を展開している「NEKTON FUJISAWA 」です!

 

1号店であるNEKTON FUJISAWAは、藤沢駅南口から徒歩5分ほどの便利な立地にあります。

入店してみると、温かみのある内装が目を引きます。海っぽいモチーフもたくさんあり、「コワーキングスペース」というよりも「湘南のカフェ」といったおしゃれな雰囲気。

食事利用のみもOK!? NEKTONの日替わり“コワーキングメシ”

NEKTONの特徴の一つが、シェフが日替わりで提供するランチ。この日は、火曜日担当シェフの小竹さん(2017年9月時点)による「国産大豆ミート焼きと3種の野菜のナムル 冬瓜とネギとショウガのスープ付(900円)」をいただきました。

小竹さんが提供するのは、動物性のものを使わないヴィーガン料理。たとえば、お肉は料理に使えないので、大豆ミートと呼ばれる大豆でできた製品を肉の代用品としています。実は私、勝手に「ヴィーガン料理って食材に制限があるし、我慢してるんじゃない?」と思っていたんです。

 

そんな気持ちを抱きながら初めて大豆ミートを口にしてみると、め、めちゃくちゃおいしい! 思わず箸も進みます。大豆ミートは食べ応えがあり、満足感もあって肉の代用品という位置づけではもったいないくらい。ヴィーガン料理がこんなにもおいしいものだったとは……!

 

食事だけでなくスイーツも堪能。この日は「自家製アイスクリーム・米粉とクルミのクッキー付(ドライイチジク、アールグレイ、ラム酒/レモンとバニラビーンズ)」と、「洋なしジャムとドライブルーベリーのVEGANベイクドチーズのタルト」でした。チーズタルトもアイスクリームも、一切乳製品を使わずに豆乳や甘酒、ココナッツミルクなどで風味をつけているんだそうです。こちらも絶品でした。

火曜日昼担当シェフの小竹さんに話を伺いました

井口:小竹さんはどうしてヴィーガン料理を提供しているのでしょうか?

 

小竹さん :ヴィーガン料理を作り始めたきっかけは友人の子どもがアレルギーで小麦が食べられなくて、その子が食べられるようにと米粉でスイーツを作ったら喜ばれたことでした。

食材に制限があるなかで工夫して料理を作ることがすごく楽しくて、どんどん自分でも勉強するようになり、そのうち「自分のお店を持ちたい」と考えるようになって。それで力試しができるところを探してこちらに行きつきました。

 

井口:週1回キッチンを借りてシェフとしてお店に立ってみて、どんな気付きがありましたか?

 

小竹さん:実際に運営してみると想像よりもいろんなことがわかり勉強になります。やはり家族に料理を出すのとは全然違いますし、「お料理を最高の状態で提供するってどういうことだろう」など、今までよりもさらに一歩進んで考えられるようになりました。

 

井口 :現在は出店準備を並行して行われているのでしょうか。

 

小竹さん:今は子どもも小さいのでそこまで実現はできなくて、まだ先のことなんですけどいずれ大きくなったらと計画は立てています。キッチンは人それぞれだと思うんですけど1年半くらい担当された方もいて、自分の生活に合った無理のない携わり方を皆さん工夫されているみたいです。

湘南にもコワーキングスペースが欲しい……その思いから生まれた場所

それにしても、なぜキッチン併設というユニークな形態にしたのでしょうか? NEKTON代表の三浦悠介さんに聞いてみましょう。

 

井口 :三浦さんはどうしてコワーキングスペースをオープンしたのでしょうか?

 

三浦さん:僕はNEKTONの代表であるとともに湘南地域密着型のフリーマガジン「フジマニ」の代表取締役編集長でもあります。自分が事業を立ち上げた19歳なのですが、創業時は実家、その後は自分のアパートを本拠地にしていたのですが、2009年に藤沢市のインキュベーションセンターに入居させていただきました。

ベンチャー企業の育成枠というような場所だったのですが、創業支援のための場所なので入居年月に上限があるんです。そこの期限の終了が間近となり、退出後のことを考えた時に、コワーキングスペースの立ち上げを思いつきました。

 

井口:でもなぜコワーキングスペースだったのでしょう?

 

三浦さん:元々、インキュベーションセンターの事務所は四畳半程度の広さしかないスペースで、気分転換にそこ以外の場所で仕事をしようと考えたら、適した場所がこの藤沢駅前には圧倒的に少ないと気づいたんです。

大手のカフェさんで作業をするか、もしくは親しい喫茶店のオーナーにお願いして作業させてもらったりするか……。でも、電源やWi-Fiがないことも多いんです。

そのとき、「自分のようにコワーキングスペースを求めている人がいるのではないか」と思い、すでに東京の四谷で「Froh Coworking」というコワーキングスペースを運営していた仲間の世良信一郎と相談しながら立ち上げたのが「NEKTON FUJISAWA」なんです。

 

井口:最初に入ったとき、カフェっぽいと思ったのですがそれには何か意図が?

 

三浦さん:私は藤沢生まれなのですが、いわゆる湘南の人はライフスタイルを大切にします。コワーキングスペースは毎日使う場所というイメージがあったので、「居心地が良くて、かっこいい場所にしないと受け入れられないだろう」と考え、空間にはこだわりを持ってデザインしました。

たとえば、このテーブルはオリジナルで作ったものですし、椅子などもこの空間に合うものを選定しました。

 

井口 :飾られている絵などは海っぽいものが多いですよね。

 

三浦さん:実は、「NEKTON」というのは自らの力で泳ぎ針路を決める魚やクジラなどの回遊性生物のことなんです。フリーランスの方のように、組織に属さず自分で働き方を決める生き方は、いわば「回遊性生物」ではないかなと。以前、「ノマド」という言葉が注目を集めましたが、これはもともとの語源が「遊牧民」ですから言葉的に山っぽいんですよね。

それに対し、湘南といえば「海」。だから海っぽいネーミングにしたいという気持ちがあり、ノマドに変わる生き方の提案も含めて「NEKTON」という屋号にしています。フリーランスな生き方をしている人たちの総称として、そういう人たちが集まる藤沢の場としての「NEKTON」です。

 

井口:ネクトンワーカーという生き方の提案、いいですね……!

NEKTONならではの独自の料金システム

入り口のすぐ横に券売機があります。しかも料金は2時間500円、1日利用でも1,000円という安さ……!

 

井口:私は料金の安さに驚いたんですけど、どうしてこれが実現できているのでしょう……?

 

三浦さん:それを実現できている理由がキッチン併設なんです。NEKTONではキッチンの利用者さんが店番を兼ねています。なので、ほかに店番の人を雇う分の人件費を抑えることができます。

さらに、NEKTONの利用料は全部券売機でまかなっていまして、このシステムだと決済が単純になります。キッチンの人の売り上げとコワーキングスペースの売り上げが混ざらないのも利点です。

 

井口:そこに安さの秘密があったのですね……!

NEKTONは50平米ほどのこぢんまりとした規模。電話やおしゃべり、打ち合わせ(1カ月会員は2時間まで同伴無料)などが制限なくできるという店内で気が付いたのは、人と人との距離感の近さです。


井口:コワーキングスペースというと、これまで訪れたところは空間を広く使っているのが印象的でした。でも、NEKTONのサイズはコンパクトですよね。それにも何か理由があるのでしょうか?

 

三浦さん:僕はこのスペースを2年目から「シェアするリビングルーム」というネーミングをつけたのですが、昔、お母さんは料理していて、お父さんは本を読んでいて、子どもは宿題をするという過ごし方をしたことはありませんか? 勉強や仕事をするとき、静かすぎると意外と集中できないって方が一定数いるんですよね。

なので、ここを1つの大きなリビングルームだと仮定して、お食事をする方がいれば本を読んでいる方もいて、いろんな人がいる空間にできたらと思いました。こうした環境を心地良いと思う方は、うちの利用にぴったりだと思います。

井口:ウェブサイトを見たら、新しく北口にできた2号店は正反対の雰囲気ですよね?

 

三浦さん:1号店の属性として、にぎやかでいろんな人と交流できること。それにはいい面もあれば、にぎやかだと集中できない人もいる。なので、北口の2号店はこちらと対照的なお店にしました。雰囲気もソリッドですし、それぞれの席はパーテーションで区切り、集中できる感じにしました。

 

三浦さん:1号店に関しては特におしゃべりについては制限を設けていませんが、2号店に関しては5分以上の電話や打ち合わせにはガラス張りのミーティングルームを利用してもらうことにしています。それによって、音の問題の大きくは解決できました。

 

井口:会員さんもその日の気分で場所を選べるんですね! ごはんも曜日ごとに違うし、毎日新鮮な気持ちで仕事ができそうです。

 

三浦さん:そうですね。おかげさまでご好評いただいています。メニューは曜日担当のシェフごとに出すお料理のジャンルもバラバラなんですが、キッチンを借りてから独立してお店を出す人が2015年の8月からで3組出ました。

 

井口:すごい! 3組も!!


キッチンの壁には、卒業して飲食店を立ち上げた方々のサインがあります。川崎や大船など藤沢周辺で出店されていて、料理のジャンルも和食割烹やイタリアンなどさまざま。

 

シェフのみなさんは、それぞれ腕試しをするために来ていただいているので、お客さまに提供して反応を見ていろいろメニューを絞り込んだりしてお店を出されているみたいですね。

キッチン×コワーキングスペースという新しい業態、NEKTONの今後の展開は

井口:「NEKTON」ですが、今後はどのように展開していきたいですか。

 

三浦さん:いろいろ構想はありますが、もしこのコワーキングスペースが藤沢で成功してうまく受け入れられたら、全国にフランチャイズ展開をできたら面白いなと思っています。実際に運営しながら、コワーキングスペースとキッチンの相性は良いなというのは思っていまして。飲食店希望者の腕試しの場所は、ほかの地域でも絶対需要があると思うんです。

こうしたチャレンジできる場所を提供し、その方がスタッフを兼ねると、ランニングコストも安く済みます。さらに、意外と地方都市の方がワーカーさんが集まりやすい場所なんじゃないかと考えています。

 

井口:藤沢店の湘南のカフェの雰囲気のように、その地域の特色あふれるスペースが全国に広がったら素敵だなと思います。ありがとうございました!

働くことができる場所という利用以外にも、藤沢のママ同士で出会える場所の提供としての「おやこカフェ」というイベントを毎週水曜日の10時~14時に行っていて、その日は親子客の利用でいっぱいになるそうです。単なる働く場所としてだけではなく、地域のハブとなる役割を果たしているスペースでした。

Writer Profile
井口エリ
井口エリ

オタク気味フリーライター。WEBメディアを中心に執筆を行う。得意分野はサブカルチャー、街歩き、神社、日常の気になるネタやネット上の話題など。好奇心の強さが取り柄。Twitter:@chip_potekko

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