お金がなかなか貯まらないと日々頭を抱えている人も多いのではないでしょうか。無駄遣いをしている限り、貯まるものも貯まりません。とはいえ、家計のやりくりは自己流の人がほとんどかも。そんな私たちに節約の心得や手法を指南してくれる存在が、節約アドバイザーです。
なかでも現在、メディアや講演、書籍著者として活躍しているのが丸山晴美さん。21歳で貯蓄に目覚め、フリーターやコンビニの店長などを経験しながら5年間で600万円を貯めて、26歳でマイホームを購入。丸山さんなりの仕事との向き合い方、そして気になるフリーランスへ伝えたい“節約のポイント”を聞きました。
「自力でマイホームを買いたい」、節約のきっかけは一冊の情報誌
――丸山さんが節約アドバイザーとしての道を歩むきっかけはなんだったのでしょうか?
21歳くらいの頃、リクルートから発行されていた総合マネー情報誌「あるじゃん」を読んで、住宅に興味を覚えたことですね。当時、ローンや金利のことをまったくわかっていなかったのですが、近くに住宅展示場があったので、とりあえず見に行きました。
そのとき、親切にしてくれた営業担当の方から「家を買いたかったら頭金1,000万円くらい貯めた方がいい」と言われました。とはいえ、私はそのときフリーター生活。10万円すら貯まるかどうかの状況で、どうしたらいいのだろうと思っていたら、後日たまたまスーパーの雑誌が置いてある棚に、1,000万円貯まる家計について書かれた本を見つけました。読んでみたら節約にまつわる内容だったんです。
――家を買いたい気持ちから、節約に意識が向いたのですね。
そうなんです。その本を読み、収入が少なくても、工夫次第でお金を貯められることを知りました。ちなみに、当時の住んでいた部屋が狭めのワンルームで、しかも駅から歩くと30分、自転車でも10分くらいかかる物件。ここから早く抜け出したい! という思いも強くて節約熱に火が付きましたね。
それからすぐに、フリーターのままじゃ収入も安定しないと考え、中古ゲームソフトを販売する会社に正社員として就職しました。そのとき、縁あってコンビニのオーナーをしていたおじさんと知り合いになったのですが、2年ほど勤めた会社を辞めてすぐのタイミングで、手伝ってほしいと。かっこよく言えばヘッドハンティングされて、そのままコンビニ店長を引き受けることになりました。
コンビニ店長をしながら節約本の著者デビュー
――丸山さんはコンビニ店長時代にマンションの購入に至るわけですが、5年間で600万円はどのように貯めたのでしょうか?
中古ゲーム販売会社でもらったボーナスもほとんど貯蓄に回していましたし、コンビニ店長時代も手取り25万円のうち14万円は貯めていました。
コンビニ店長だった2年間に、お金への理解を深めたいと思い働きながらファイナンシャルプランナーの学校にも通っていました。そして、マンション購入が決まったタイミングで独立を決意しました。
――独立といっても、仕事開拓はそう簡単ではないような……。
実は中古ゲームソフト販売会社に就職してしばらくした頃から、メディア関連の仕事もちょこちょこ受けていたんです。というのも、先ほどお話ししたマネー情報誌「あるじゃん」で景品が当たる読者ハガキをよく出していたのですが、「感想欄を全部埋めると景品が当たりやすい」という知恵をどこからともなく仕入れて、私の身の上話も交えながら、しっかり感想を書いていました。
それが編集者の目に留まったらしく、「取材させてください」と依頼が届いたんです。当時「節約=主婦」のイメージが強かったので、OLの節約生活が珍しかったようで、その雑誌取材をきっかけに、テレビにも取り上げられるようになりました。そこからご縁がつながっていって、コンビニ店長時代に最初の書籍も出せるまでになったんです。
――本業と並行していた副業が本業になったパターンですね。
そうですね。本も出して、取材のギャラも増えてきたこともあって、独立しても生計を立てていけるかなと。ただ、そう簡単ではなかったですね。
――というと?
独立後しばらくは仕事がなく、開店休業状態が続きました。営業もしなかったので、とりあえず待とうと。結果的に独立1年目は年収200万円いかなかったくらいですね。
ただ、持ち家があったのでそこは安心でしたし、「これを乗り切れば、それはそれでネタになるな」くらいに思っていました。そもそも会社員は向いていないと感じていたので、踏ん張っていたのかもしれません。
自分は経営者で、営業で、売りもの――すべて必要だからこそやりがいもある
――現在、丸山さんは個人向けではなく、メディアをフィールドにする節約アドバイザーとして活躍されています。仕事の範囲を絞ったのはなぜでしょう?
私が独立した当時、メディアで「節約」「清貧」「ケチ」が同時に語られていて、それは違うんじゃないかな……と思っていたんです。私にとっての節約は、出すところは出して抑えるところは抑える、メリハリをつけて無駄をなくすこと。ただ、メディアでは節約もケチもいっしょくたにして、面白おかしく伝えていたのが気になったんですよね。
――たとえば、ペットボトルを大量にお風呂に入れて水道代を浮かす、みたいな?
それも一例ですね。こんなドケチな人がいて面白いですよみたいな、ある種のエンターテイメントになっていたんですよね。そうではなく、私はもっと節約に対するイメージを高めたいと思いました。私は節約によって家も買えたし、それって面白いことでも恥ずかしいことでもないんだよって広めたかったんです。そんなこんなで、勝手に広報部長みたいなつもりで節約をポジティブなものにしたいなって。それには影響力が強いメディアを主戦場にしました。
――確かに突飛なアイデアよりも、現実的に続けられる節約法を知りたいです。
私もそうだったので、まずは節約の考え方の部分を体系的に伝えることに重きを置いて、今日まで執筆や講演活動をしてきました。独立してから15年以上、いま雑誌やテレビでも面白いテクニックよりも、節約にまつわる考え方や意識の部分に働きかける流れが浸透してきたので、よかったなと。
――フリーランスとして15年以上、継続して仕事をもらうために気を付けていることはありますか?
やはり誰に対してもですが、嫌な印象を与えないように気を配っています。たとえば、「節約の特集を組むから誰か詳しい人いない?」っていう話になったときに、「あの人、ちょっと性格に難があるからやめておいた方がいいよ」と言われてしまうと、「じゃあ違う人で」となってしまいます。
会社やブランドではなく、個人の名前を背負って生きているので、自分が売り物であり、広報であり、営業であり、経営者であるわけです。すべてを兼ねているのが個人事業主です。すべて自分次第なので、やりがいはありますが、それ以上に気遣いは大切にしていますね。
――ちなみに、ギャラはどのように設定されていますか?
原稿の執筆であれば1万円から5万円、講演は10万円から30万円くらいで設定しています。テレビや雑誌の取材など、公共性が高いものであれば、額面を問わないこともあります。基本的にご依頼いただいたお仕事は、可能な限りお引き受けしています。
“消えもの”になる食費は抑え、学びと体験にはお金を惜しまない
――丸山さんご自身は、どのような節約を心掛けているのでしょうか?
食費は抑えるようにしています。ほぼ自炊で外食はほとんどしません。お菓子も買わずにできるだけ手作りします。あと、我が家には飲み物も、「お茶」「水」「牛乳」しかありません。子どもにも幼少期から「もし別の飲み物がよければお小遣いで買いなさい」と言い続けてきたので、家にジュースがないのは当たり前。
また、膨らみがちな教育費もメリハリをつけています。子どもの普段の学習はネットで無料の教材をプリントして活用してする一方、体験にはお金を惜しみません。子どもが昆虫好きなので国内外の自然が豊かな場所に連れて行きます。自分が手間を掛けたり、日々ちょっとした我慢をしたりすることで、大きな感動を得ることができる。子どもには、そうした価値観を身に付けてもらいたいです。
――メリハリあるお金の使い方って大事だなと、改めて感じます……。ご自身のスキルアップや仕事のため、「これは出し惜しみしないぞ」というお金はありますか?
放送大学には、約15年間通っていて、3学部卒業しています。学んできた内容は心理や経済など、仕事にフィードバックできそうな科目。節約は心理とも深く関わってくるので、認定心理士の単位も放送大学に通う中で取得しました。学んだことは原稿や講演に活きていると思います。いざ資格を取ろうと思っても学ぶ習慣がないと頭に入りづらいので、意識的に勉強することは重要だと思い、通い続けています。
あと、仕事道具でお金をかけているのはパソコンとその周辺機器です。数十万円かかっても、とにかくいいものを買うようにしています。
お金は夢と希望を叶える最強の武器
――ちなみに、お金が貯まらないと嘆いているフリーランスにアドバイスできることはありますか?
国民年金基金やiDeCo、小規模企業共済など所得控除の対象になる制度を知らない、ということがあるのではないでしょうか。自分にとってメリットになる制度を活用し、節税につなげることが大切だと思います。また、手間にはなりますが、最大65万円の控除を受けられる青色申告をすることは必須ですね。
――最後に丸山さんにとってお金とは?
お金は生活のために必要ですが、夢や希望を叶えるためのツールでもあります。ただ貯め込むのではなく、出すところと抑えるところのメリハリをつけて、貯めたお金で夢や希望を実現させることが大切だと思っています。いざお金が必要となったときに、貯めておけばよかった…と後悔するのではなく、あのときに気づいて貯めておいてよかったと思える人でありたいと思っています。