確定申告の手続きは、住所がある市区町村の所轄税務署で行うもの。個人事業主が自宅や事務所の引越しをすると、多くの場合において住所はもちろん所轄税務署が変わります。引越しに際し、必要な税務関係の手続きや留意点について解説します。
確定申告書の提出場所は?
個人事業主は原則として、生活の本拠である住所(住所地)を管轄する税務署に確定申告書を提出します。しかし事情により、生活の本拠である住所(住所地)とは別に現在実際に住んでいる場所(居所)があるケースも考えられます。この場合は「居所」を納税地に変更することができます。変更前(住所地)の住所と変更後(居所)の住所の所轄税務署に、どちらにも「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」を提出してください。
(参考:国税庁 No.2029 確定申告書の提出先 納税地)
引越しをしたら、すぐに税務署に届出を!
引越しをしたら、税務署での各種手続きが必要です。各届出には提出期限があります。一般的な確定申告の期間(翌年の2月16日~3月15日)にかかわらず、引越し後の手続きは迅速に行いましょう。手続きのための届出書には、下記の種類があります。
引越しをした際の届出書一覧
(1)所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書
納税地に異動があった場合に提出する。
- 提出先:転居前と転居後のそれぞれの納税地の所轄税務署
- 提出期限:納税地の異動があった後、遅滞なく
(2)個人事業の開業・廃業等届出書
事業の廃止や事務所等の移転があった場合に提出する。
- 提出先:納税地の所轄税務署長(事業所の所在地が納税地と異なる場合は、事業所の所在地を所轄する税務署長にも提出が必要)
- 提出期限:事業の廃止又は事務所等を移転した日から1カ月以内
(3)給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書
給与等の支払を行う事務所等を開設、移転又は廃止した場合(「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出した場合を除く)に提出する。
- 提出先:給与支払事務所等の所在地の所轄税務署長(移転の場合は、移転前と移転後のそれぞれの事務所等の所在地の所轄税務署長)
- 提出期限:移転又は廃止の日から1カ月以内
(参考:国税庁 No.2091 個人事業者の納税地等に異動があった場合の届出関係)
年明けから確定申告期間に引越したら、どちらの住所で申告すればいい?
年明けから確定申告期間内に引越しをした場合、確定申告を転居前と転居後のどちらの住所の所轄税務署で行えばいいのか迷うかもしれません。前年の収入があったのは転居前の住所だからです。
しかし、確定申告は「提出時の所轄税務署」で行われるもの。つまり、転居後の住所で行うのが正解なのです。
一口に引越しといっても、個々の働き方や事情に応じて求められる手続きはさまざま。手続きの漏れがあると、税法違反に問われることもあります。引越しの際は、税務関係の届出も、ガスや水道の開通などと同様、生活に必要な手続きとしてリストアップしておきたいものです。