個人事業主として独立する時期は、実務的な開業準備で忙しく、つい事務手続きが後回しになってしまいがちです。しかし、なかには書類の提出期限を過ぎてしまうと節税の特典が受けられなくなる手続きも……。個人事業主が開業する際に必要な税務署での手続きについて解説します。
個人事業主が開業時、税務署に提出すべき書類
個人事業主として独立する際は、税務署で手続きを行う必要があります。手続きの種類は業種や適用を希望する特例などによって異なりますが、代表的な書類は下記の5つです。
個人事業主が開業するときに対応すべき手続き
- 個人事業の開業届出・廃業届出等手続
- 所得税の青色申告承認申請手続
- 青色事業専従者給与に関する届出手続
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請
- 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
その他、状況に応じて、棚卸資産や減価償却資産、消費税についての手続きが必要になる場合もあります。今回は、代表的な5つの書類について見ていきましょう。
(1)個人事業の開業届出・廃業届出等手続
「個人事業の開業届出・廃業届出等」とは、いわゆる開業届のこと。管轄税務署に、個人事業主が事業を始めたことを報告するための手続きです。この手続きをしなくても確定申告をすることは可能です。ただし、後述する「所得税の青色申告承認手続」を行うには、開業届が提出されている必要があります。
提出期限は、事業開始から1カ月以内です(期限日が土、日、祝日の場合は、その翌日まで)。
(2)所得税の青色申告承認申請手続
青色申告で確定申告をするために必要な手続き。青色申告には、一定水準の記帳と正しい申告をすれば所得金額から最大65万円の特別控除を受けられるなど、税制上の特典があります。
提出期限は、青色申告で確定申告書を提出する年の3月15日まで。1月16日以降に開業した場合は、期限は事業開始日から2カ月以内となります(期限日が土、日、祝日の場合は、その翌日まで)。
(3)青色事業専従者給与に関する届出手続
青色事業専従者給与の特例を受けるための手続きです。青色申告が承認されれば、一定の要件のもとで、配偶者や親族に支払った給与の額を必要経費として計上することができます。
提出期限は、青色事業専従者給与額を必要経費に計上する年の3月15日までです。1月16日以降に開業した場合や、新たに専従者を増やす場合は、事業開始日から2カ月以内が期限となります(期限日が土、日、祝日の場合は、その翌日まで)。
(4)源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請
一定の要件のもと、従業員から徴収した源泉所得税を年2回にまとめて納付できる特例を受けるための手続きです。青色事業専従者や従業員に給与を支払っている場合には、支払いの都度、支払金額に応じた所得税及び復興特別所得税を徴収し、徴収した月の翌月10日までに納付する必要があります。その作業を効率化できます。
提出期限は、特に決められていません。ただし、特例が適用されるのは、提出した日の翌月に支払う給与分からです。
(5)給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
給与の支給額に関係なく、配偶者や親族、従業員に給与を支払い、その事務を行う(事務所を開設する)ことになった場合に、税務署にそのことを報告するための手続きです。
提出期限は、事務所の開設から1カ月以内です。
これらの手続きに関する届出書や申請書は、すべて国税庁のウェブサイトからダウンロード、または税務署の窓口で入手可能です。必要事項を記入のうえ、所轄税務署に郵送または持参で提出しましょう。
事業は開業前ではなく、開業の手続きを終えてから本番がスタートします。手続きを後回しにせず、事業継続に集中できる環境を整えましょう。