個人事業主の開業から確定申告までの手続き・流れを理解しよう!

※この記事は2020年12月25日に、税制改正にあわせ、内容を一部修正しました。

会社を辞めて個人で事業を始めようと思ったとき、一体どんな手続きが必要になるのでしょうか。開業から確定申告までの一連の流れを説明します。

事業開始時に税務署で行いたい3つの手続き

実は、個人事業主として仕事をしようとするとき、必ず行わなくてはいけない手続きはありません。しかし、次に説明する届出書と申請書の提出は、事業開始時に行っておいた方が税制上のさまざまな恩恵を受けることができます。

(1)個人事業の開業・廃業等届出書

「個人事業の開業・廃業等届出書」、いわゆる「開業届」は事業を始めてから1カ月以内に提出します。開業届を提出しないことでの罰則は特にありませんが、後述する「所得税の青色申告承認申請書」を提出するには、この開業届の提出が必須です。また、屋号(個人事業の名称や店舗の名前)での銀行口座を開設する際にも、開業届が提出されていることが必須条件です。

 

なお、なかには個人事業主として事業を開始した時に開業届を出さなかった人もいるかもしれません。開業届の提出が遅れたことによるペナルティはありませんので、気付いたときに提出をしましょう。なお、開業届を提出していないから確定申告は不要、ということは一切ありません。

(2)所得税の青色申告承認申請書

確定申告には、「白色申告」と「青色申告」の2種類の方法があります。特に、個人事業主として節税を考えるのであれば、数々の優遇措置を受けられる青色申告を選択するのがおすすめです。白色申告に比べて手間のかかる申告方法にはなりますが、節税できる金額は非常に大きいです。自分で白色申告をしていた人が、青色申告に対応した記帳をしてくれる代行サービスを利用したことで、サービス利用料以上の金額を節税できた、という例は珍しくありません。

 

提出期限は、青色申告をしたい年の3月15日まで。1月16日以降に開業した場合は、事業開始日から2カ月以内です。

 

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(3)青色事業専従者給与に関する届出書

配偶者や親族に給与を支払って仕事の一部を任せている人は、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出した方がいいでしょう。家族に支払った給与は、原則経費として計上することはできません。家庭内でお金が回っているだけだからです。しかし、この届出書を提出して青色申告をすれば、一定の要件のもと家族に給与が支払われていれば、経費計上が可能になります。ただし、労務の対価としては過大な金額と判断されたときは、一部経費として認められなくなります。

 

提出期限は、青色申告承認申請書と同じく、青色事業専従者給与を計上したい年の3月15日まで。1月16日以降に開業した場合や、専従者が新たに増える場合はその日から2カ月以内です。

 

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上記のほかにも、従業員から徴収した源泉徴収所得税に関して特例を受けられる「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」や、従業員に給与を支払うことになったら提出する「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」があります。これらは必要に応じて、提出しましょう。

 

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開業届を提出したら、事業専用口座の開設をしよう

事業を開始したら、事業専用の預金口座を開設しましょう。必ず開設しないといけない決まりはありませんが、確定申告では事業に使ったお金だけを必要経費として申告します。つまり、一つの口座で事業とプライベートの入出金を行うと、事業に関する費用の判別作業が発生し、余計な時間を取られてしまいます。特に、青色申告特別控除65万円(※)の適用を受ける場合、事業のお金をプライベートで使ったとして、「事業主貸(じぎょうぬしかし)」の勘定科目で記帳をする必要があります。記帳作業の効率化には、事業専用の口座開設がおすすめです。

※2020年の所得税確定申告から、65万円の控除を受けるための要件が変わり、e-Tax(電子申告)による申告、または電子帳簿の保存をしている場合のみとなりました。要件を満たさない場合、控除額は55万円になります。

【参考記事】2020年から青色申告特別控除65万円の適用要件が変更に

事業を開始したら、会計業務はどうすれば?

事業開始の準備が整ったら、次は日々の仕事上の取引に関する記帳をしていきます。記帳とは、仕事上入ってくるお金と出ていくお金をすべて帳簿に記録していくこと。1月1日から12月31日の入出金を取りこぼさず記録します。記帳をすることで、確定申告の際に申告する売り上げや経費の金額の根拠を残します。

 

溜め込むと後々計算が大変になるので、週に1回は記帳をするのが理想的。さらに、毎月末に収入と支出の計算を行い、その月の利益を把握すると、その月の経営成績の確認にもなります。毎月の結果を残しておくことで前月や前年同月と比較もでき、経営状況の分析に役立ちます。

 

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帳簿は7年間、領収書やレシートは5年間の保管が必須!

できあがった帳簿と、その作成の根拠となる領収書やレシート、請求書などは、その年の確定申告が終わった後も保管しておく必要があります。その保管期間は、帳簿は7年間、領収書やレシート、請求書などは5年間です。

 

これだけの長期間、保管をしなければならないのには理由があります。それは、「後から」税務署に確認される可能性があるからです。確定申告時には、作成した帳簿を提出することはありません。つまり「確定申告書に適当な数字を記入して提出しても、税務署にはその数字が正しいかどうかわからない」のです。

 

では、税務署はどのようにこういった不正を見つけるのか。その手段が、確定申告の時期が終わってから実施する税務調査です。税務調査時に保管されているはずの領収書やレシート、請求書などをもとに、その合計金額が確定申告書の金額と合致しているかどうかを確認します。このとき帳簿や領収書などを破棄してしまっていると、経費が認められなくなってしまい、多額の追徴金を払うことになってしまいます。開業直後や売り上げが低い場合でも、税務調査の対象になり得るので心に留めておきましょう。

個人事業主の難関の一つ「確定申告」は年末から準備しておくのが吉

年末までの記帳作業が終われば、最後に残っているのは確定申告書の作成と納税です。確定申告とは、1年間(1月1日から12月31日)に生じた給料や売上、使った必要経費などをもとに所得(もうけ)を確定し、その金額から税額を計算し、納税する手続きのこと。翌年の2月16日から3月15日の間に行います。

 

個人事業主の多くは、勤めていた会社を退職し、独立して個人事業主となります。年の途中から開業した場合は、税務署に開業届を出した日からその年の12月31日までが個人事業主としての売上や仕入れ、経費を計算、記帳する期間です。もし8月末まで会社員で9月から個人事業主で仕事を始めた場合、8月までの会社員としての給与収入と9月からの個人事業主としての事業収入を合わせて確定申告することで、1年の税金を精算します。このとき、個人事業主の部分だけを申告する人がいますが、併せて確定申告すると会社員の頃に天引きされていた税金が返ってくるケースもあります。

 

なぜ、年末から確定申告の準備を進めるかというと、年が明けるとすでに新しい年の計算や記帳を並行して行わないといけないからです。そのため、あらかじめ必要な書類をそろえておくと、準備がスムーズになります。書類をそろえたら、1年間の合計の売り上げ、仕入れ、経費(通信費、交際費など項目ごと)の金額を帳簿から転記します。

 

個人事業主として開業すると、その手続きから始まり、確定申告までさまざまな書類を自分で提出する必要があります。開業直後は実務が忙しく、なかなか会計のことまで頭が回らない人は多いと思います。ただし、これらの書類は定められた期限内に提出しないと、税制上お得な制度を活用できないことも。本記事を参考にしつつ積極的に情報収集をして、事業だけでなく会計業務もスムーズに進めていきましょう!

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