個人事業主の場合、課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の納税義務が発生します。納税というと、確定申告の時期に申告して納付するイメージがありますが、前年度の確定消費税額によっては、年度の途中に消費税を申告して納付する必要があります。今回は、消費税の「中間申告制度」と「任意の中間申告制度」について解説します。
消費税の「中間申告」とは
「中間申告」とは、前年度の確定消費税額が48万円超の場合、納付税額を分納できる制度のことです。支払う納付税額は変わりませんが、1回あたりの納付税額は小さくなるため支払いの負担が軽減されます。この中間申告は前年度の確定消費税額の金額による規定があり、中間申告回数は年1回から年11回になります。
たとえば、2019年度分の確定消費税額に応じて、次のようになります。
(1)48万円超400万円以下
中間申告・納付回数……年1回
中間納付税額……2019年度分の確定消費税額の2分の1
(2)400万円超4,800万円以下
中間申告・納付回数……年3回
中間納付税額……2019年度分の確定消費税額の4分の1
(3)4,800万円超
中間申告・納付回数……年11回
中間納付税額……2019年度分の確定消費税額の12分の1
48万円以下の事業者ができる「任意の中間申告」とは
「任意の中間申告」とは、前年度の確定消費税額が48万円以下の事業者が「任意の中間申告書を提出する旨の届出書」を納税地の所轄税務署長に提出した場合、年1回自主的に確定消費税額を分納できる制度です。これは、2013年度の消費税法改正により、2015年度から自主的に中間申告(任意の中間申告)ができるようになりました。
「中間申告」および「任意の中間申告」の申告と納付期限は?
中間申告と任意の中間申告の適用には、中間申告書を提出します。
中間申告の場合の申告書提出期限と納付期限
中間申告書の提出と納付期限は、申告回数によって異なります。
- 年1回……1~6月分は8月末日
- 年3回……1~3月分は5月末日、4~6月分は8月末日、7~9月分は11月末日
- 年11回……1~3月分は5月末日、4月分~11月分は末日の2カ月以内
前年度の確定消費税額が48万円超の事業者(中間申告義務のある事業者)は中間申告の期限までに消費税及び地方消費税の中間申告書を提出することになっています。しかし、中間申告書を提出期限までに提出しなくても、その提出があったものとみなされます。
任意の中間申告の場合の申告書提出期限と納付期限
任意の中間申告を適用するには「任意の中間申告書を提出する旨の届出書」の提出が必要です。提出期限は中間申告対象期間の末日(2021年は6月30日)。中間申告書を提出したのにも関わらず消費税を納付しないと、延滞税が発生しますのでご注意ください。
任意の中間申告を行う事業者(前年度の確定消費税額48万円以下)が提出期限までに中間申告書の提出がない場合、「任意の中間申告書を提出することの取りやめ届出書」が提出されたとみなされるため、中間申告書が提出されたことにはなりません。消費税を分納したい場合は、必ず期日までに中間申告書の提出を済ませておきましょう。
中間申告と任意の中間申告適用時の納税方法
消費税の納付方法は、6種類あります。
- e-Taxを使って、預貯金口座からの振替により納付
- インターネットバンキングから納付
- クレジットカード納付用の専用サイト「国税クレジットカードお支払サイト」から納付
- コンビニエンスストアの窓口で納付
- 預貯金口座からの振替により納付
- 金融機関または所轄税務署の窓口で納付
どの方法で納付しても問題はありませんが、注意したいのは振替納税です。振替納税の場合、預貯金口座から消費税額が引き落とされるのは法定納期限の1カ月後。うっかり翌月の口座にお金がないなんてことがないよう口座振替日を把握し、消費税額を期日までに指定した口座に準備しておきましょう。消費税額の納付が遅れると本税と併せて延滞税が発生してしまいます。
消費税の分納制度は、消費税の課税事業者のほとんどが該当するといっていいでしょう。確定消費税額が48万円以下の事業者で年度末に一年分の消費税額をまとめて納めるのが難しそうな場合は、ぜひこの「任意の中間申告」によって、納税負担を軽減していきましょう。