スーツ代や散髪代が経費として認められる条件

仕事をする上で、身だしなみは非常に大切です。特にクライアントと接する仕事をしている場合は、スーツ代や散髪代など、事業に関わりそうな支出があるかもしれません。これらはどんな条件下で経費として認められるのでしょうか。

仕事でしか着ないスーツの代金は経費になるの?

個人事業主でも、クライアントと打ち合わせをしたり、会食をしたりする際にスーツを着用するもの。仕事でしかスーツを着ない人もいるかもしれません。では、スーツ代は経費になるのでしょうか?

 

所得税法には、「家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの」は必要経費に算入しないとあります。「家事上の経費」とは、プライベートの生活費のこと。

 

「これに関する経費」とは、「家事関連費(仕事とプライベート両方に関係がある経費)」のことで、スーツ代を含む衣服代はこれにあたるとされています。つまり、スーツ代は経費として計上できないということです。

 

ただし、国税庁のウェブサイト には「この家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます」ともあります。つまり、明らかに仕事をする上で必要だと証明できれば、経費として計上できる可能性があるのです。

衣服費は「特定支出控除」の対象になっている

特定支出控除というのは、給与所得者にのみ認められている控除。会社員がある特定の支出をした際に、基準となる金額を超えた場合は必要経費として計上してもよいという制度です。ある特定の支出には、「通勤費」「転居費」「研修費」「資格取得費」「帰宅旅費」に加え、2013年以後は「図書費」「衣服費」「交際費」が該当するとされています。

 

つまり、給与所得者に限ってではあるものの、法律の改正によりスーツ代も経費として認められるようになったのです。

 

それまで、衣服代は家事関連費として経費計上が難しいとされてきました。その認識が変わったことにより、個人事業主の経費に対する税務署の見方も変わってくると推測できます。

事業割合で按分すれば経費に入れてもOK!?

では、実際に個人事業主はスーツ代を経費にできるのでしょうか? 税務署に問い合わせたところ、「本当に仕事で使っているということが証明できれば、全額は難しいが計上してもいいのでは」という回答が返ってきました。

 

事業割合で按分をし、かつその仕事をする上でのスーツの重要性を主張できれば、スーツ代が経費として認められる可能性は高くなりそうです。

 

たとえば、週休2日制の仕事の場合、一週間(7日)のうち5日は仕事、2日はプライベートとなります。よって、仮に14万円のスーツを買ったとすると、7分の5の10万円は経費に計上できる可能性があるのです。

散髪代は経費になる?

身だしなみにまつわる家事関連費には、散髪代も含まれます。これは、経費になるのでしょうか? 

 

その基準は、業務上で必要かどうか。たとえば、芸能人は見た目を整え、かっこよくまたはきれいに見られるほど人気が出て、収入が増えるかもしれません。見た目が重要な仕事なので、散髪代の経費性も認められやすいでしょう。

 

一方、飲食店の経営者は経費性を主張しづらいでしょう。飲食店の経営者の収入につながるのは、見た目ではなく料理の味と考えるのが一般的だからです。

 

スーツ代を含む家事関連費は、明確な区分さえできれば経費計上が可能です。また、何が経費に含まれるかは業種によって異なります。ただし、何が経費として認められるかは税務署の判断によるところも大きいため、所轄の税務署に問い合わせるのがよいでしょう。

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