事業所が盗難被害に遭ったら、損失の会計処理はどうなる?

ある日事業所に着いたら、入口の窓ガラスが割れていて、何者かが侵入した形跡が……。盗難被害に遭った場合、会計処理に影響はあるのでしょうか? その点を解説します。

まずは被害状況を把握しよう

泥棒に入られたと分かったら、何がなくなっているかを確認します。そして、盗難の被害届には、盗まれた物をもれなく記載することがポイントです。盗まれた物を記載し忘れると、損失と認められなくなる可能性があります。

 

盗難の被害届には、盗まれたお金の額や、物の被害価格を書きます。ここで価格を確定させることで、保険会社に補償を請求したり、帳簿に損失を計上できたりします。

 

ただし、その価格の把握は容易ではありません。たとえば、個人事業主の場合は、通帳や財布を仕事とプライベート兼用にしていることが多いと思います。しかし、これでは事業用のお金をいくら盗まれたかどうかを明確に把握することができません。そのため、万が一に備えて、普段から通帳や財布は事業用とプライベート用に分けて管理をしておくのが得策です。

 

被害額がはっきり分からない場合は、およその金額で評価するしかありません。その際はなるべく低く見積もることをオススメします。なぜなら、損失を多く計上すると、税務調査の際に否認されやすくなり、最悪の場合、重加算税という重い罰則が課せられる可能性があるからです。そうならないためにも事業用資産の日々の記録は重要です。

 

また、盗難の被害届を出したら、控えをもらうようにしましょう。控えをもらえないときは、被害届の番号だけでもメモするようにしてください。これが盗難によって損害が発生したという証拠になります。

ケース別仕訳の記載方法

仕訳の方法はさまざまですが、今回はその一例をご紹介します。

現金を盗まれた場合の仕訳の確認

現金を盗まれた場合は次のように仕訳をします。

 

<仕訳例>
・現金200,000円を盗まれた場合
 (雑損失) 200,000 / (現金) 200,000

・その後、犯人が見つかり、現金200,000円が戻ってきた。
 (現金) 200,000 / (雑収益) 200,000

商品などの棚卸資産を盗まれた場合の仕訳の確認

決算時にいったん棚卸計上し、棚卸商品のうち雑損失を計上する方法があります。

 

<仕訳例>
・期首商品(1月1日現在でに手元にある商品)が100,000円、期末商品(12月31日の営業終了時点で残っている商品)が200,000円、盗まれた商品が50,000円の場合。
 (仕 入) 100,000 / (商 品) 100,000
 (商 品) 200,000 /(仕 入) 200,000
 (雑損失) 50,000 /(商 品)  50,000

事業用の車や備品などの固定資産を盗まれた場合の仕訳の確認

固定資産の場合は、被害額の評価がポイントになります。基本的には盗難に遭った時点での帳簿価額を被害額とします。そして、減価償却費と雑損失を区別して表示することがポイントです。

 

<仕訳例>
・期首未償却残高が300,000円の備品(耐用年数:残1年)を4月に盗まれ、決算月は12月。
 (減価償却費) 100,000 /(備品) 100,000
 (雑損失) 200,000 /(備品) 200,000
※減価償却費:300,000円×4/12カ月=100,000円(直接法)

 

損害保険の中には盗難被害が補償されているものがあります。加入している保険会社に連絡して確認してみましょう。もし補償される場合は、入金される保険金額と被害額の差額を雑損失として計上します。

 

<仕訳例>
・期首未償却残高が300,000円の備品(耐用年数:残1年)を4月に盗まれ、決算月は12月。保険契約が付されており、保険金150,000円を受け取った場合。
 (減価償却費) 100,000 /(備品) 100,000
 (現 金) 150,000 /(備品) 200,000
 (雑損失)  50,000 


※減価償却費:300,000円×4/12カ月=100,000円(直接法)

盗難の際の会計上のポイントは、被害額の把握です。毎日しっかりと帳簿付けを行っていれば、万が一の際にも役立ちます。

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