
税務に関する帳票類は、税法上は7年間の保管期間があります。7年間分となると、その量は膨大。保管する場所が必要ですし、整理の手間もかかりますよね。そんな苦労を解消する法律「電子帳簿保存法」について、2015年の法改正の内容を解説します。
電子帳簿保存法とは
「電子帳簿保存法」は、1998年に制定され、国税関係の帳簿書類を電子データにして保存することを認めた法律です。当初からコンピュータで作成したデータのみ認められていました。その後法改正が行われ、特定の要件を満たせば、紙媒体の書類をスキャナーで電子化して保存すること を認める内容が追加されました。
しかし、その要件が非常に厳しいということもあり、この制度を適用したのはごく一部の人だけでした。そこで、個人や法人の書類管理をもっと効率的にして負担を減らそうと、2015年に要件緩和を含めた改正が行われたのです。
2015年の法改正でどのように変わったのか?
では、2015年の法改正で、「電子帳簿保存法」はどのように変わったのでしょうか。まずは、データ保存に関する項目から見てみましょう。
2015年の改正での「電子帳簿保存法」の変更点
(1)スキャナーによるデータ保存の範囲拡充
3万円を越える契約書・領収書はスキャナーによる保存が認められていませんでしたが、すべての契約書・領収書のスキャナー保存が可能になりました
(2)電子書類義務化の廃止
電子署名の義務付けが廃止されました。ただし、データの入力者または監督者に関する情報を確認できること が、要件に追加されました
(3)一般書類の保存方式の変更
見積書などの一般書類(重要度の低い書類)に関しては、書類の大きさに関する情報の保存やカラーでの保存は不要になりました。
こうして電子化が手軽になった一方で、事務処理を行う体制を整えることが要件としてプラスされました。ただし、電子文書がいつの時点で存在していたかを確認できるように、タイムスタンプを付す必要があります。
適正事務処理要件とは?
スキャナー保存をするためには、スキャナー保存前の紙書類の改ざん防止の観点から社内規定等の整備と順守が求められています。
(1)相互けんせい
スキャニングなどに伴うミスや不正を未然に防止する観点より、特定の者に業務が集中することを回避する必要があります。別々の者が作業をすることにより、相互けんせいが機能する体制を整備する必要があります。
(2)定期的なチェック
事務処理手続きの定期的なチェックをおこなう必要があります。最低限年に1回以上は必要とします。
(3)再発防止策
検査等を通じて問題点が把握された場合に、経営者を含む幹部に不備の内容が速やかに報告されるとともに、原因究明や改善策を検討する必要があります。必要に応じて規定等の見直しがなされる体制が必要です。
書類を電子データ化しておくメリットはたくさんあります。紙資料を保管する場所が減るほか、必要な書類を確認する際はスピードが上がって効率的ですし、紙の書類を管理する人の人件費や労力を大幅に減らすことも可能でしょう。要件の緩和が行われた今こそ、データ保存の始めどきなのかもしれませんよ。