
住宅を貸すことで得られる家賃収入は、税務上は不動産収入として扱われます。最近では「リスクの少ない不労所得」として注目されている不動産ですが、経費の計上についてはあまり知られていません。家賃収入に対して計上できる経費の代表例を紹介します。
不動産所得の計算方法
不動産所得とは、以下のいずれかに該当する所得を指します。
- 土地や建物などの不動産の貸付け
- 地上権など不動産の上に存する権利の設定及び貸付け
- 船舶や航空機の貸付け
また、不動産所得の金額は、次のように計算します。
不動産で得た総収入金額-必要経費=不動産所得の金額
不動産所得に限らず、必要経費をしっかりと計上することが節税につながります。ただし不動産所得がほかの所得と違うのは、認められる必要経費が非常に限定されているということです。そのため、経費の計上がより重要になります。
不動産所得の代表的な必要経費と計上のポイント
次に、不動産所得の計算において計上できる代表的な経費と、それらを計上する際のポイントについて解説します。
(1)固定資産税
貸している不動産にかかる固定資産税は、「租税公課」という経費項目で計上できます。固定資産税は通常年4回に分割して納付しますが、納付金額が確定した時点で、その年の経費として計上することが可能です。
(2)損害保険料
貸している不動産にかかる地震保険料、火災保険料は、「損害保険料」という経費項目で計上できます。ただし、数年分の保険料を前払いしている場合は要注意。その年の経費として計上できるのは、あくまでもその年1年分の保険料のみです。
(3)減価償却費
減価償却とは、取得した不動産の費用を耐用年数に応じ、数年に分割して計上することです。そもそも、減価償却の対象となるのは、年が経つことで価値が下がっていく資産です。つまり、土地と建物を購入して不動産所得を得ている場合でも、建物の取得費用は減価償却費として計上できても、土地の分は計上できません。
(4)修繕費
修繕費とは、物件の修理、修繕にかかった費用のこと。内装のリフォームや破損した箇所の修理などにかかった費用が、これに該当します。
ここで注意が必要なのは、「修繕費」と「資本的支出」の違いです。これらは、計上の仕方が異なります。おおまかにいうと、修繕費とは資産の原状回復のための費用。資本的支出とは、購入時より資産の価値を高めるための費用です。
修繕費 は、貸付けや事業のために使う建物、建物の附属設備、ブルドーザーなどの機械装置、自動車などの車両運搬具、パソコンやプリンターなどの器具備品等の資産を修理、修繕した費用を指します。通常の維持管理や修理のための支出なので、必要経費になります。
一方、一般に修繕費といわれるものでも、資産の使用期間を延長させたり、資産の価額を増加させる支出は、「資本的支出」と判断され、修繕費とは区別されます。資本的支出と判断された費用は、事業所得や不動産所得の計算上、減価償却の方法により各年分の必要経費に算入します。
修繕費と資本的支出の違いは?
修繕費と資本的支出の区別は、「修繕」や「改良」などどんな名目で行われたかではなく、実質的にどんな変化が起きたかによって判断されます。たとえば、次のような支出は原則として資本的支出になります。
資本的支出
- 建物の避難階段の取り付けなど、物理的に何かを付け加えるためにかかった費用
- 用途変更のための模様替えなど、改造または改装にかかった費用
- 機械の部品を特に品質または性能の高いものに取り替えた場合において、取り替えにかかった費用のうち通常の取り替えの費用を超える分の額
ただし、以下の場合は「修繕費」として計上できます。
修繕費
- おおむね3年以内の期間を周期として行われる修理、改良など
- 20万円未満の修理、改良など
- 一つの修理、改良などにかかった費用のうち、資本的支出か修繕費か明らかでない費用がある場合で、その金額が 60 万円未満のとき
- 一つの修理、改良などにかかった費用のうち、資本的支出か修繕費か明らかでない費用がある場合で、その金額が、その資産の前年末の取得価額のおおむね10%相当額以下であるとき
※前年末の取得価額……取得時の価額に前期末までの資本的支出の価額を加えた金額
不動産所得の経費は、事業所得の分とは区別して計算、帳簿付けする必要があります。確定申告に向けて、不動産所得についても日頃からしっかり準備を進めておきましょう。