サロンに属さない“フリーランス美容師”、その働き方のメリットって?

サロンに専属して働いているイメージが強い美容師。しかし最近は、“自分の腕一本勝負”のフリーランスとして活動している人もいるそう。なぜフリーランスの美容師として働くことにしたのか、そもそも顧客をどのように獲得し、どこで仕事をしているのかなどなど、気になることは尽きません。専属ではないからこその楽しさ、そして大変さもあるはず。そんな疑問を携えて、フリーランス美容師・渡辺真一さんを直撃してみました。

指名されたからには最初から最後まで担当したい

――最初に、フリーランスの美容師になろうと思われたきっかけについて教えてください。

美容専門学校を卒業して、20歳のときに自由が丘のサロンに正社員として入社したのがキャリアの始まりでした。アシスタントを経て、2年目でスタイリストとしてデビューしたのですが、スタイリストになるとお客さまを掛け持ちしないといけないんです。

 

お客さまが自分を指名してくださっているのに、カウンセリングとカット、最後のスタイリング以外は基本的にはアシスタントに任せることになります。もし自分がお客さまの立場だったら、最初から最後まで指名したスタイリストに担当してもらいたいと思うんですよね。でも、自分が勤めていたサロンではそういった対応は難しくて……。働き方を模索しているときに、フリーランス(以下、フリー)で働いている美容師がいることを知り、自分の理想とする接客をするならフリーになるのが適していると思うようになりました。

――それから別のサロンに転職されずに、フリーになることを決意されたのでしょうか?

そうですね。辞めると決めたのは美容師として6年目のときになるのですが、フリーになろうと決意してからすぐに店長に話をしに行って、無理を言って2カ月くらいで退社させてもらうことにしました。正直、貯金は2カ月生活できるくらいしかありませんでしたが、最悪バイトでもすれば食いつなげると割と楽観的考えていましたね(笑)

――思い切った決断ですね! とはいえサロンと違って営業活動も個人だと大変そうですが、どのようにされていたのでしょうか?

実は、サロンに勤めていた当時からブログを書いていて、お客さま全員にURLを教えていました。フリーになることを知らせた際に、「もし自分のところにきてくださるのであれば、ブログを見てくださいね」と伝えました。でも、フリーになりたての頃は、お客さんはめちゃくちゃ少なかったですね。なので、掛け持ちで複数の美容室で業務委託というかたちでバイトをしていました。

 

このとき、一番つらかったのは精神面ですね……。マンツーマンでお客さまと向き合いたかったからフリーになったのに、なかなか思うように行かない歯がゆさがありました。そんな状態が2年ほど続きました。それでも地道に活動を続け、LINEでお客さまに連絡を取ったり、常連のお客さまがご友人を紹介して下さったりして顧客が増えていき、昨年あたりにようやくフリーだけでも生活できると思えるくらいの収入に達したので、バイトは辞めることにしました。

フリーの美容師とシェアサロンとの契約形態とは?

――現在は、どのような働き方をされているのでしょうか?

恵比寿にあるシェアサロン「ORO(オロ)」と契約を結んでいて、美容室の定休日以外に指名が入った日に出勤して施術しています。シェアサロンは営業時間中かつ席が埋まっていないときは自由に使用させてもらえるので、パート的に美容師として働いている主婦の方もいますよ。基本的に飛び込みのお客さんはいませんので、施術は予約のあったお客さまのみ。カットやカラーの施術はもちろん、シャンプーからドライヤーまでマンツーマンで行います。

――シェアサロンはフリーランスの美容師とどのような契約を結ばれるのでしょうか?

おおまかに3つの契約形態に分かれます。時間で区切って美容師がレンタル料を支払う「時間貸し」、1カ月単位の「月貸し」、その都度売上から決まったパーセンテージをサロンに支払う方法です。多いのは、売上から決まった割合でサロンに使用料を払うケースですね。

 

――材料費などの経費はどのように精算されているのでしょうか?

僕が今いるサロンの場合は、光熱費や水道代を始め、シャンプーやカラー剤などの材料費が契約料に含まれています。もしほかに自分で使いたいシャンプーなどがあれば、自分で購入します。僕は気に入っているものを使いたいので、ほとんど自腹で購入しています。あとは、美容師の命でもあるハサミ(1本約10万円)の購入費やそのメンテナンス代、サロンまでの交通費が自腹です。これらの費用は経費として、確定申告時に申告しています。

――ちなみに、バイトを辞められたときの収入から今の収入をくらべると、どれくらいアップしましたか?

2倍いかないくらいですね。でも、労働時間は短くなりました。最初に勤務していた美容室では大体朝7時に出勤して、掃除や朝礼、練習、ミーティングがありました。開店中はお客さまの施術をして、閉店後は掃除、後輩の練習を指導する。終電ギリギリまで働く日も多く、一日のほとんどを仕事に充てていました。それに比べると、今は予約をいただいてから、準備して営業し、終わったら自由です。休もうと思えば何カ月でも休めます。すべて自分のさじ加減次第です。

 

自由な時間が増えたので、働き方に対する満足度は高いです。もし、毎日朝から晩までずっと予約が途切れずにお客さまがきてくだされば、収入は3ケタに届くと思いますが、今は自由な時間を確保しつつ働けるバランスがちょうどいいですね。

フリーとしての活動は、夢を実現させるための準備期間

――一方で、フリーであることに対して不安に感じることはありますか?

指名がないと不安ですね。お客さまがいないと何も始まらないので。当たり前ですが、フリーで働くと基本給もボーナスも有休もありません。普通のサロンは基本給にプラスして歩合がつきますので、スタイリストとして活躍すれば収入も安定します。自由を取るか、安定を取るかを決めるのは全て自分です。

 

僕の場合、今はお客さまも安定してついてきているので、営業面での不安は特にないのですが、健康はやはり心配ですね。病気になって働けなくなったりすると収入がゼロになってしまいますから。それが一番怖いですね。ただ、それを考えても仕方ないので、元気なときは目の前のことを頑張るのみです。

――最終的には、自分のお店を持たれる予定ですか?

美容師になったときから、自分の店を持つことは抱いている夢です。従業員を雇ったり、事務的な処理も増えたりと、今よりもハードになりそうですが、設備からスタイリング剤まで自分の理想とするサロンを作ることができる点はやはり魅力です。フリーとして働いているのは自分が求める働き方を実現したかったこと以外に、経理なども経験することで、将来お店を持った際に役に立つと考えているから。フリーになって得た財産は、次のステップへの準備になると思っています。

 

Interview
渡辺真一さん
渡辺真一さん

フリーランス美容師。高校で簿記・情報処理・マーケティングなどの経営知識を学び、専門学校を卒業後、自由が丘のサロンで6年間働いた後フリーランスとして独立。現在は恵比寿のシェアサロン(ORO)にて活動中。マンツーマン施術で丁寧な接客と確かな技術力が評判。
▼公式サイト
http://www.shinichi5.net/

Writer Profile
末吉陽子
末吉陽子

編集者・ライター。1985年、千葉県生まれ。日本大学芸術学部卒。コラムやインタビュー記事の執筆を中心に活動。ジャンルは、社会問題から恋愛、住宅からガイドブックまで多岐にわたる。
▼公式サイト
http://yokosueyoshi.jimdo.com/

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