個人事業主が税務調査の対象になったときの対応法とは
お金の調査

「税務調査」と聞いて何を思うでしょうか?「テレビの中の話で私には関係ない」「売り上げが低い自分のところには来ないだろう」と、個人事業主の方の中には税務調査を対岸の火事だと思っている人がいるかもしれません。しかし、個人事業主であっても税務調査の対象に十分なりえます。今回は税務調査のいろはから具体的な対応方法までを紹介します。

そもそも税務調査とは何か?

国税庁が発表しているパンフレット「税務手続について(国税通則法等の改正)」では、税務調査について次のように定めています。

 

申告内容が正しいかどうかを帳簿などで確認し、申告内容に誤りが認められた場合や、申告する義務がありながら申告していなかったことが判明した場合には、是正を求めるものです。

出典:税務手続について(国税通則法等の改正)

 

つまり、税務調査とは売り上げや経費を正確に計上していないなど、本来納めるべき税金を納めていない場合に追加で納税をすること。もちろん、申告内容に誤りがない場合は、追徴税額は発生しません(=申告是認)。

2018年度の税務調査は65万件!

では、税務調査はどのくらいの確率で行われているのでしょうか。「平成30事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について」によると、2018年度の所得税に関する税務調査は61万1千件。所得税は個人の所得に課せられるものです。給与所得者の場合は会社を通じて税金を天引きされ、税務署が調べるということはないため、この調査のほとんどが個人事業主に対して行われたものです。個人事業主の数は211万人(総務省 統計局 「平成26年経済センサス-基礎調査」より)とされていますので、高確率で調査が行われていることになります。

税務調査はいつごろ、どんな手段で連絡があるのか

毎年7月10日は、税務署の人事異動日とされています。この税務署にとっての新年度である7月から、税務調査が増えてきます。税務署からの連絡方法はさまざまで、文書が届くケースや電話がかかってくるケースなどがあります。この事前通知を受けてから、税務署との日程調整へと移りますので、実際の調査が行われるのはさらに後日となります。なお、税務署からの連絡が入る可能性が高い期間は11月ごろまでですが、初回連絡が3月のケースもあります。

 

ここで注意したいのが、税務調査は必ずしも事前通知があるわけではないということ。国税庁ウェブサイトの「事前通知に関する事項」では、次のようにあります。

 

実地の調査を行う場合には、原則として、調査の対象となる納税者の方に対して、調査開始前に相当の時間的余裕を置いて、電話等により、実地の調査を行う旨、調査を開始する日時・場所や調査の対象となる税目・課税期間、調査の目的などを通知します。

 

ただし、法令の規定に従い、申告内容、過去の調査結果、事業内容などから、事前通知をすると、(1)違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ、又は、(2)その他、調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると判断した場合には、事前通知をしないこともあります。

 

なお、事前通知が行われない場合でも、運用上、調査の対象となる税目・課税期間や調査の目的などについては、臨場後速やかに説明することとしています。

出典:国税庁ウェブサイト

 

また、調査の事前通知が何日前に来るかということも明確には定められていません。

 

実地の調査を行う場合の事前通知の時期については、法令に特段の規定はなく、また、個々のケースによって事情も異なりますので、何日程度前に通知するかを一律にお示しすることは困難ですが、調査開始日までに納税者の方が調査を受ける準備等をできるよう、調査までに相当の時間的余裕を置いて行うこととしています。

出典:国税庁ウェブサイト

 

そのため、予期しないタイミングで実地調査が行われることもあるのです。しかし、きちんと経理処理を行っていれば、会計資料を提示すればいいだけなので、慌てることはありません。

税務調査の連絡が入ってからの流れ

例外的に事前通知がないこともありますが、基本的には税務調査の事前通知が入った際に調査日時の調整を行います。納税者と税務官、税理士に依頼している場合は三者の都合の良い日時を設定しますが、書面などで案内された場合は、あらかじめ税務署が日時や場所を指定してきます。電話の場合は電話口で日時と場所を決めます。このとき、もし提示された日程に先約がある場合はその旨を伝えましょう。

 

税務調査の事前通知に際しては、あらかじめ納税者の方や税務代理人の方のご都合をお尋ねすることとしていますので、その時点でご都合が悪い日時が分かっている場合には、お申し出ください。お申し出のあったご都合や申告業務、決算業務等の納税者の方や税務代理人の方の事務の繁閑にも配慮して、調査開始日時を調整することとしています。

 

また、事前通知後においても、通知した日時について、例えば、一時的な入院、親族の葬儀、業務上やむを得ない事情が生じた場合等には、申し出ていただければ変更を協議します。

 

なお、例示した場合以外でも、理由が合理的と考えられれば変更を協議しますので、調査担当者までお申し出ください。

出典:国税庁ウェブサイト 税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)

 

また、日時決定後にやむを得ない理由で変更をせざるを得ない状況になったら、その旨を申し出れば最大限考慮してもらえることになっています。

税務調査の調査官は意外とフレンドリー!?

税務調査と聞くと、強面の税務官が出てきて取り調べを受けるのではないか? と思うかもしれません。もちろん、税務官にもよりますが、税理士の伊藤由一さんによると「調査官はフレンドリーに接してくる」とのこと。それはなぜなのでしょう?

 

「その理由は、『素直に税務調査に応じてほしいから』です。調査時に税務官に対して敵対心を丸出しにして話をする納税者がいます。そういうケースは税務官も人間ですので、税法の原理原則のみで判断され経費に関する解釈の話にはなりません。逆に素直に間違ったことをすぐに認め、税務官から与えられた課題をすぐに対応すると、税務調査に協力的だということで調査期間も短くなるケースが多々あります。また、納税者に対して高圧的な態度をとって納税者が体調を崩し、仕事ができなくなることにも配慮しているかもしれません」(伊藤さん)

 

また、税理士に対してもフレンドリーな態度を取るのだとか。その理由とは?

「税理士が納税者を指導する立場だからです。すでに納税者と人間関係ができている顧問税理士を味方にすることにより、調査を円滑に進めていきたいと思っているのです。実際に修正申告などの手続きは顧問税理士がするため、良好な関係を築いておきたいと思っているはず。当たり前ですが、税務官は税務調査に協力的な税理士、納税者に対しては好印象を持ちます」(伊藤さん)

後ろめたい金額がある場合の対応方法

調査前に帳簿資料の整理をしていると、実はプライベートな支出を経費として記録していたということも……。こういう場合、どのように対応するのがベストなのでしょうか? 伊藤さんは次のように話します。

 

「最良の対応方法は『指摘されたら素直に謝り絶対に嘘をつかないこと』です。実は、調査官によって調査の手法はさまざま。証憑(しょうひょう)を数百円単位まで確認する税務官もいれば数千円以上の交際費関係を中心に確認する税務官もいます。たとえば、車両関係に後ろめたい金額が入っていたとしても、そこを確認されないケースもあります。そして指摘された点についてどう対応するのがいいのか、税務官からアドバイスをもらいましょう」(伊藤さん)

納税者一人で対応するのと税理士が対応するのでは、税務調査の結果が違う

税理士は税理士法第二条によって、第三者の求めに応じて「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」を行うことができると定められています。税務調査の立ち合いとはこの中の「税務代理」にあたります。

 

税務調査が入った際には「なぜ○○が経費に入らないのか?」など、税法の解釈をめぐって税務官と議論を交わすことになります。しかし、一般の方では経費として認められたい項目を税務官に認めさせる証拠が乏しいのが事実。しかし、何度も税務調査を経験している税理士ならば、会計の知識に加え今までの経験値も交渉の材料として主張できます。たとえば、「前に□□税務署では交際費は売り上げの○%まで認められたことがあります」などです。そのため、納税者一人が対応するのと税理士が対応するのでは、経費として認められる項目が多くなることもあります。

反面調査に事前通知はある?

税務調査の対象となった際、調査対象者の関係する銀行や取引先の会社に対して税務署が調査を行うことを「反面調査」といいます。反面調査は税務調査の一種で、主に取引先など納税者以外の方に対する調査を実施しなければ、納税者の申告内容に関する正確な事実の把握が困難と認められる場合に実施されます。その調査方法は以下の3つです。

 

  • 文書による照会
  • 電話連絡による照会
  • 相手先に出向く臨場確認

 

つまり、正しい申告を行っていないと取引先にも影響が出てしまうのです。最悪の場合、税務調査がきっかけで信用を失い、取引停止になることも……。さらに、反面調査は「運用上、原則として、あらかじめその対象者の方へ連絡を行うこととしています」(出典:国税庁ウェブサイト)とされていますが、申告内容、過去の調査結果、事業内容などから、事前通知をすると、正確な税額等の把握を困難にする恐れ、又は調査の遂行に支障を及ぼす恐れがあると判断した場合には事前通知をしないこともあります。

 

また、反面調査は基本的に拒否できない内容になっていますが、実は反面調査を受ける側に反面調査を受けるか罰則を受けるかの選択肢があるのです。ただ、反面調査を受けずに罰則を受ける人はほとんどいません。

税務調査に入られると、追徴税額はどれくらいになる!?

税務調査が入ると、一体どれくらいの金額を取られてしまうのでしょうか。たとえば、税務調査が修正申告という結果で終わった場合、下記の税金が取られます(すべてではなく対象にならない項目もあります)。なお、所得税だけではなく、住民税や手当なども金額が変わってきます。

過少申告加算税 10%(50万までの部分)または15%(50万を超える部分)

正当な理由があるときや自主的に修正申告を行った場合にはかかりませんが、税務調査で発覚した追徴課税に対してかかります。

重加算税 35%

仮装隠ぺいにより過少申告を行ったと判断された場合にかかります。

延滞税 原則14.6%

納期限から遅れた日数に応じて、延滞税が日割りでかかります。平成28年の税率は、納期限の翌日から2カ月経過する日までは2.8%、それ以降は9.1%です。

住民税 10%

一律10%です。

国民健康保険税

国民健康保険税は地域により計算が異なります。ほとんどの地域は住民税などで保険料が算出されるため、修正申告をすることで国民健康保険税も再度さかのぼって計算します。

母子扶養手当

母子家庭の方が受給している「母子扶養手当」も再度計算します。所得に応じて受給金額を算出しているため、所得が増えれば受給できる金額は減額します。もし、すでに受給済みの場合は返還を求められる可能性があります。

 

税務調査は自分には関係ないこと、入られたら追徴課税を払えば済むと思っている方が大半だと思います。ただ、実際に入られると多くの時間や労力、場合によっては取引先へ迷惑をかけることもあります。マイナンバー制度も始まり、税金や社会保険に関しては益々厳しくなる時代が予想されます。正確な情報を基に確定申告を行いましょう。

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