
所得税は、原則として1月1日から12月31日までに得た全ての所得に対してかかります。
これは、事業で儲けが発生したら、それに応じて利益を社会に配分しようという狙いがあるからです。そのため、社会政策やその他の見地から、“儲け”として見なされない所得には税金がかかりません。こうした「非課税所得」にはどういったものがあるのでしょうか? その種類とポイントについて解説します。
非課税所得の種類
非課税とされる所得は所得税法などの各種法律に規定されています。その主なものを趣旨別にまとめると、以下のようになります。
非課税所得その1:実質弁償的性格に基づくもの
実質弁償的性格とは、「労働の対価としての収入でない」ものを指します。代表的なものは下記です。
- 給与所得者の出張旅費、転勤旅費など
- 給与所得者の通勤手当(月10万円まで)
非課税所得その2:社会政策的配慮に基づくもの
所得税は、その人の税金を負担する能力に応じて課せられます。そのため、下記のような生活用品の売買によって得る所得や損害保険金、遺族年金などの社会政策として取得する所得に関しては非課税となります。
- 家具・衣服など生活に通常必要な動産の譲渡による所得
- 授業料などの学費に充てるためになどに給付される金品
- 損害保険金、損害賠償金、見舞金など
- 雇用保険、健康保険、国民健康保険の保険給付など
- 生活保護のための給付
- 遺族年金、傷病賜金、増加恩給など
非課税所得その3:公益的な目的に基づくもの
広く社会にとって有益な貢献をしたことによって得た所得については、非課税となります。
- ノーベル賞の賞金、文化功労者年金など
非課税所得その4:二重課税の防止に基づくもの
相続や贈与などにより得た所得については、相続および贈与税の確定申告時に課税されるため、受け取り時には非課税となります。
- 相続、遺贈または個人からの贈与により取得するもの
その他非課税所得に該当する項目
その他、上記に該当しない項目で、非課税となるものは下記のようなものがあります。
- オリンピックまたはパラリンピック競技大会における成績優秀者を表彰するものとして交付される金品
- NISAなどの非課税口座の上場株式等にかかる配当所得・譲渡所得
- 宝くじの当選金
- スポーツ振興投票券(toto)の払戻金
損害賠償金などを取得した場合、税金はかかるの?
何か突発的な事故や災害などで損害賠償金などを受け取った場合、それが課税対象かどうかは破損物や状況によって変わります。ここでは、取得した原因によって分類し事例を紹介しながら解説いたします。
心身に加えられた損害によって取得するもの
交通事故に遭った際に、加害者から受け取った治療費や慰謝料については非課税です。また、それに伴う給与や事業の収益の補償として受け取った補償も同様です。
資産に加えられた損害によって取得するもの
交通事故に遭った際に、商品の配送中でその商品(棚卸資産)の破損などに対して支払われる補償は課税対象です。また、事故に遭って車両が使えない間の本来得られる収益に対する補償についても課税対象となります。店舗の損害による休業補償なども同様です。
これらはいわゆる売上の補てん(商品を消費して収入を得たことと同様の扱い)としてみなされるため、課税対象として扱われます。
ただし、車両や店舗などの破損などによって車両や店舗そのものに対する補償は非課税となります。
必要経費に算入される金額を補てんするために取得するもの
災害などにより、店舗が損害を受け休業せざるを得なくなることもあるでしょう。休業期間中に従業員へ支払う給与や、一時借店舗の賃料などに対する補償は必要経費として計上できるため、課税対象となります。
非課税所得は申告が必要?
非課税所得を得た場合、それに関する手続きは必要ありません。つまり確定申告時には特に何もしなくて良いということです。
また、これら非課税所得について、取得する際に必要経費が発生したとしても、それは経費として認められません。なぜなら、経費は事業を行う上で必要な費用を指すからです。たとえば、宝くじの当選がよく出る店に買いに行くときに支払った交通費などは経費として認められません。
確定申告をすることに慣れた人であれば、ふとした収入があれば「もしかしたら確定申告しないといけないのでは?」と疑問に感じる場面が多々あるかもしれません。自分が得た所得が課税対象か、非課税か悩んだときは、税務署などで専門家に聞いてみましょう!